外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その34
「いいいっ……痛い、痛いィィィ~~~! 何をするんだぁ、クソがァァァ~~~!」
「暴れるな、暴れるんじゃないっ!」
「よし、俺達もソイツを瓦礫の山から引きずり出す手伝いをするぞ!」
「う、うおおっ! く、来るな、来るな、駄犬共ォ!」
「誰が駄犬だ! ウガアアアアッ!」
「ヒ、ヒイイイアアアアッ!」」
沙羅さん、そしてアシュペリウスを筆頭とした犬達が、一斉に死霊内蔵型人形兵の残骸でできた瓦礫の山の中で蠢くモノに攻撃を仕掛ける。
そして、ドシャーッ――と、引きずり出すのだった。
「うわ、真っ黒な全身タイツの怪人だ!」
「ん、胸は真っ平らだけど、一応、女みたいだぞ、ごずずん。」
「こここ、この喋るクソ犬! 胸が真っ平らで何が悪いィィィ~~~!」
さてと、沙羅さんやアシュペリウスを筆頭とした犬達に瓦礫の山から引きずり出されたモノは、アデプト団の象徴でもある不気味な三つ目のお面で素顔を隠し、その下の部位である首から両足の爪先までを真っ黒な全身タイツで覆う黒子のような女である。
「さあ、手足を拘束したことだし、次は素顔を見せてもらうわよ!」
「う、やめろっ! お面を引っ張るんじゃない! こここ、このおっぱい女!」
「あのぉ、本来はアナタと同じく貧乳なんですが……。」
「愛梨、そんなことはどうでもいいでしょう? とにかく、お面を奪い取る!」
むう、私も本来は貧乳なんでけど……と、それはともかく、アフロディーテさんは黒子女の手足を縄で縛りあげると、そんな黒子女の素顔を覆う三つ目が描かれたお面を勢いよく引き剥がすのだった。
「む、この顔どこかで……。」
「アフロディーテさん、アーヤとアースの双子とそっくりだよ!」
「ん、もしかして三つ子?」
「う、うぬぅ……そ、そうだ! ああ、そうさ! お前らに捕まって保安官にパクられた愚兄のアースと愚妹アーヤは、あたしの兄妹だ! ちなみに、あたしの名前はアーナだ。」
不気味な三つ目が描かれた仮面を引き剥がしたことで露呈した黒子女の素顔は、私達が捕まえて保安官に引き渡した魔道書専門の盗賊団と言っても間違いない月刊写本倶楽部……いや、アデプト団のメンバーことアースとアーヤ兄妹にそっくりである。
要するに黒子女は、あのふたりとの関係は、同じ母親から生まれた多胎児の間柄の兄妹である。
で、ご丁寧にもアーナと名乗るのだった。
「あ、あのぉ、もしかしてアールとかアーヤ、アージュ、アーティなんてご兄妹がいます?」
「なっ……貴様、何故、そのことがわかったんだ!」
「ちょ、ビンゴじゃん、愛梨。」
「う、うん……。」
適当に訊いてみたけど、まさかビンゴだったとはね……。
ん、ということは、同じ顔をした兄妹が他にも……ま、まるで某六つ子みたいじゃん!
「さ、コイツも保安官に引き渡そう。」
「うん、そうですね……って、その前にボスのクロとかいう奴の情報を聞き出しましょうよ!」
黒子女ことアーナも保安官に引き渡すべきね。
だけど、その前に月刊写本倶楽部の編集長ことアデプト団のリーダーであるクロの情報を聞き出さなくちゃね。




