外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その26
「ほう、律儀な連中ね。お仲間のアンタ達を助けに来たワケだし――。」
「ち、違うと思うニャ……。」
「ほう、違うと? まさか、私らに捕まったアンタ達を暗殺しにやって来た刺客だって言いたいワケ?」
「う、うにゃ、ありえない話じゃないニャ。編集長のクロさんは、保安官に捕まった連中はともかく、私らのような新参者には容赦がない御方ニャんだ!」
新手なのアデプト団のメンバーが孤児院にやって来る。
先だって自称、通りすがりの正義の味方である派手な装身具を身体のあっちこっちに身に着けたお姉さんことカルラと、その戦友だという大蛇のサカラによって捕まった仲間である三人組の女のコの……いや、猫獣人を助けに来たってワケじゃないようだ。
新参者には容赦がない月刊写本倶楽部の編集長のクロ――アデプト団のリーダーが差し向けてきた刺客のようだ。
新参者には容赦はない――とばかりに、カルラとサカラに捕まった猫獣人を粛清し、ついでに孤児院にある何かしらの魔導書の切れ端を奪うつもりね、コイツら!
「さ、とりあえず、コイツも捕まえましょう。」
「ああ、わかった。だが、コイツらから〝生物〟じゃないモノのような気がする。」
「サカラ、わかるの?」
「気のせいかもしれないけどな。」
む、新手のアデプト団のメンバーは、もしかすると〝生物〟じゃない⁉
あのヘラさんの使い魔だった人形兵みたいな存在なのかも――。
「アイツらが人間じゃねぇかもって疑ったのは、この俺だしな……よーし、その確認するのが筋ってヤツだな。」
「わ、大蛇のサカラが厳つい大男の姿に変身したわ!」
うん、確かに最初に疑いをかけたサカラが、生物なのか、それとも人形兵のような魔術によって仮初めの命を得た人形のようなモノなのかを確認するのが、なんだかんだと筋の通った行為だと、私は思う。
と、そんな大蛇のサカラの姿が、次の瞬間、鎧兜を身につけたら厳つい人間の大男の姿に変化する。
あ、ちなみに、大蛇の姿の時は、サカラの頭の上に座っていたはカルラだけど、厳つい大男の姿になった状態では、サカラの首に背後から両手を回すかたちで抱きついている。
「さてと、どうする、相棒?」
「そんなの決まっているだろう? ぶん殴るんだよ……オラァ!」
え、えええ、ぶん殴って生物かどうか試すって、まるで某ガキ大将的な発想なんですけど!
「よし、まずは一匹!」
「で、どうなの? 殴った感じは?」
「そうだなぁ。あの三つ目の仮面はともかく、その下はフニャッ……と、まるでぬいぐるみを殴った感じだろうか?」
「じゃあ、やっぱり……うええ、薄気味の悪い素顔が見えちゃっているわね。」
なんだかんだと、厳つい大男の姿に変身したサカラが打ち放った右の鉄拳が、アデプト団の刺客その一の顔面を覆っている三つ目の描かれたお面を打ち砕く。
で、そんな砕けた三つ目の描かれたお面の下から、ギョロリとした一つ目と鋭い犬歯が生えそろった三日月のような口が露わとなる。
「ふむ、触ってみたが、この感触は……目玉は硝子玉だな。それに歯は陶器か、石英を磨いたモノか……。」
「ギョ、ギョゲゲゲッ!」
「う、このっ……人形野郎! まだ再起不能じゃなかったのか!」
むう、ギョロリとした一つ目は硝子玉?
そして鋭い犬歯が生えそろった三日月のような口は、陶器や石といったモノでつくったモノ?
とにかく、コイツの身体のパーツは人工物っぽいようだ。
「ソ、ソイツらは生物じゃないんですか⁉」
「おいおい、俺らの話を聞いてなかったのかよ。ああ、そうだ。コイツらは人間じゃない。人形だ――人形を媒介にした使い魔の類だ。」
「ふ、ふええっ……ヘラさんの人形兵みたいですね!」
ビ、ビンゴッ!
刺客共の正体は、あの人形兵と同じような存在のようだ。
じゃあ、身体のどこかに動力源である核がある筈だ。
アレを取り外したり、破壊しない限り半永久的に動き続けるわね。




