外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その23
「アヒルの姐さんと眼鏡のお嬢ちゃんが合体すると、金髪碧眼のセクシーな美女になるんですね、コンコン。」
「ウフフ、〝私の本来〟の姿に限りなく近いと思うわ。ま、一部、違う場所もあるけどね。」
「一部、違う場所? そ、それはともかく、棒が巨大な羽根のような形状に変化したわ!」
「わおっ……形状変化武器なのかしら?」
模造品屋のタマモさんは、特殊な武器をつくる技術も持ち合わせているのかな?
とにかく、魔法少女アイロディーテの姿に変身した状態で売り物の棒――特に物珍しい装飾などが施されていないタダの棒が、巨大な羽根のような形状に変化するのだった。
「ん、だけど、なんだか妙な感じが……。」
「エヘヘヘ、わかります? 実はいうと、それは私がつくったモノじゃないのです。」
「え、それじゃ誰が?」
「私の親父の話だと、魔術師ザッカスって奴が置いていった曰くつきなモノでして……。」
「ちょ、曰くつきのモノなんですか!」
「だけど、巨大な羽根に変化したあたりは中々の逸材でしょう? そんなワケで安く売りましょう!」
私が握っている巨大な羽根に変化した棒は、実は曰くつきなモノのようだ。
むう、お目が高い――と、注目させておいて、それを何気なく私達の売る気だったのか……。
「まあいいわ。コイツを買わせてもらうわね。」
「おおきに! それじゃ五百MGで売りましょう!」
「わお、偽エクスカリバーに比べると、物凄く安いわね。」
「はい、コイツは誰も買わない曰くつきなモノですので、そりゃ安く売りますよ、コンコン~☆」
む、希少金属の浮遊金属製の偽エクスカリバーに比べると格段に安いなぁ……。
そんな安値じゃ私だって買いたくなるわね。
「ちなみにですが、その棒はロック鳥の尾羽からつくったモノのようですよ。あ、そうだそうだ、他の武器も買いません?」
「い、いや、もうお金は、丁度イイ具合に五百MGしか持ち合わせていなくて……。」
「あちゃー、それは残念っ! バザーは、まだ一週間続きますので気が向いたら、また来てくださいね、コンコン~☆」
丁度イイ具合に、五百MGしかアフロディーテさんは持ち合わせていなかったようだ。
はう、私もいくらかお金を持ってくるんだったわ……。
「さてと、一旦、孤児院に戻るわよ、愛梨。」
「うん、そうですね……って、アシュペリウスのお仲間のワンちゃん達をどうしよう……。」
う、忘れていた!
アシュペリウスが呼び寄せていた仲間の犬達がいることを――。
「ごすずん、俺達はどこまでもついて行きます!」
「俺も、俺も!」
「ア、アハハハ、ついて来る気満々だね、ワンちゃん達……。」
う、熱い視線を感じる!
アシュペリウスのお仲間のワンちゃん達の視線が、私に集中する……み、みんな一緒につい来そうだわ。
なんだかんだと、私のことをご主人様って言い始めたことだしね。
「まあいいじゃん。何気に役に立つかもよ? ほら、アレを狙ってアデプト団の連中がやって来た時なんかにさ。」
「あ、ああ、そういえば、そうだね、アフロディーテさん!」
うんうん、アースのように孤児院に乗り込んでくるアデプト団の連中がいるかもしれないしな。
そういう時に備えての護衛として使えそうな気がするわね、ワンちゃん達は――。
「さ、なんだかんだと、一旦、孤児院に戻るわよ!」
「うん、そうですね。」
「しっかし、ごすずんとアフロディーテさんが合体した状態だと、まるで一人二役という芸風を得意とするコメディアンみたいですね。」
「そ、そう?」
むう、なんだかんだと、そう見えてしまうのは言う間でもないのよねぇ……。
私とアフロディーテさんの人格は、合体し、ひとつになった状態であるアイロディーテになっても一緒くたになることなく独立して存在しているワケだし――。




