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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
385/836

外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その20

「浮遊金属とは、兎天原の北北西にある兎の耳でごく少量だけ採掘できる希少鉱石を加工して初めて得られる特殊な金属のことですよ、ごすずん。」


「兎の耳?」


「ああ、遠くから見ると、まるで兎の耳に見える連なったふたつの山のことです。」


「な、なるほど、そういうことだったのね、アシュペリウス。」


 ん、浮遊金属とやらについて模造品屋の露店商である狐獣人の代わりに、私の足許にいる喋る大きな黒い犬ことアシュペリウスが説明する。


 へえ、そんな遠くから見ると、兎の耳に見える可愛らしい連なった山があるんだぁ。


 なるほどなるほど、そこでごく少量だけ採掘できる金属鉱石を加工して初めて得られるモノなので、新築の三階建ての大きな家を一括購入できるような値段と同じくらいの金額がいるのね、私の目の前にある偽エクスカリバーとやらは……。


「ん、そういえば、思い出しましたよ、ごすずん。」


「思い出した? アシュペリウス、一体、何を?」


「はい、件の浮遊金属のことです。アレはすでに加工技術が失われて久しいモノだってことを――。」


「え、じゃあ、消失技術ってこと?」


「そうです、流石はお目が高い!」


「き、狐さん! アナタはそんな消失技術を?」


「はい、私が運営するタマモ工房には、先祖代々、受け継がれし魔導書があるのですよ、コンコン。」


 む、浮遊金属とやらの加工方法は、すでに公では失われて久しいモノののようだ。


 で、模造品屋の狐獣人の露天商――タマモさん(仮)は、その技術をこっそりと受け継いだモノっぽいわね。


「ふむ、タマモ工房といえば、エフェポスの村の隣町であるスパクタの町にあった筈よね? で、一か月くらい前に何者かに放火されたって聞いたような……。」


「う、アヒルの姐さん、知っていましたか……ア、アハハハ、そんなワケで店を再建するために、こうして伝説の武器の模造品などをつくって資金集めに勤しんでいるのですよ、コンコン。」


「そ、そうなんだ。大変ですね……。」


「そうなんですよ、お嬢さん! 超大変ですよ! つーか、あの放火事件は、浮遊金属など公では製造方法が失われて久しい消失技術を狙った泥棒の仕業です……あの名高い魔導書の類のみを狙う盗賊共……アデプト団の仕業かもしれません!」


「ア、アデプト団⁉」


 タマモさんは悔しそうに地団太を踏むんでいる。


 ま、まあ、その気持ちはわからないでもないかなぁ……って、魔導書と聞くと、あのアデプト団が関わっている可能性も否めないわね。


「そういえば、アデプト団のアホ共が、何人かバザー会場で捕まって豚箱送りになったみたいですね。ありがたや、ありがたや~!」


 わお、もうアースとアーヤの兄妹、それにミストって男が捕まったことが知れわたっているっぽいわね。


「ところで、浮遊金属というワケだし、そこにある偽物のエクスカリバーは、空中に浮いたりするのかな、かな?」


「おお、そこに目をつけるとは、お目が高い! ささ、手に取ってみてください、お嬢さん。」


「は、はぁ……って、何、これっ! 見た目に反して、凄く軽いわ! ま、まるで羽毛のようだ!」


 さてと、偽エクスカリバーは、まるで羽毛のように軽い剣のようだ。


 浮遊金属を冠する希少な金属製のモノだし、空中に放り投げたら、本当にフワフワと浮遊しそうだ。


 ちなみに、そんな偽エクスカリバーは、柄と刃の部分を合わせると、大体一メートル弱ってところかな?


「この軽さなら、私でも扱えそうね。」


「でも、剣術に覚えがないとダメじゃない?」


「う、確かに……。」


 羽毛のように軽い偽エクスカリバーなら、非力な私にでも自由自在に振り回せそうだわ!


 ――が、しかし、剣術に覚えがないと宝の持ち腐れかも……。


「どうでもいいけどさぁ。さっきから妙な視線を三つほど……。」


「なんですって⁉ まさか……。」


 ん、偽エクスカリバーのことは、今はさておき――アフロディーテさんが妙な視線を感じると言い出す……ま、まさか、アデプト団の連中が、私達を監視しているのかも!?

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