外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その12
「よし、私も二階へ行ってみる。」
「それじゃ私も――。」
「ああ、わかった。コイツらは、この私に任せろ!」
「わお、召喚魔術⁉ スカアハさんの背後に数頭の豹が現れたわ!」
「ま、とにかく、あっちゃん、二階へあがるわよ。」
さてと、スカアハさんを残すかたちでアフロディーテさんとウェスタさんも二階へと移動する。
むう、その前に召喚魔術とやらを行使するスカアハさんの背後には、数頭の豹が現れる。
そんなスカアハさんのペットである召喚獣だろう。
なんだかんだと、アーヤやミストの仲間が現れた時に備えての準備ってところかしら?
「ん、愛梨の声は聞こえるわ。」
「沙羅とアルテミスの声も――。」
「なんだか、慌ただしい感じね。何かあったのかしら?」
「とにかく、行ってみましょう。」
アフロディーテさんとウェスタさんが、二階へとあがろうとした時である。
二階から慌ただしい――怒鳴り声が響きわたる。
むう、なんだかんだと、二階では私が問題が起きちゃったのよねぇ……。
「お、おい、どういうつもりだ! ソ、ソイツを盗むのが目的で編集長に取り入ったモノだったのか!」
「盗むも何も、コレは元々、アンタ達が盗んだモノでしょうが!」
「な、なんだと⁉ 盗まれたモノ……盗難被害に遭ったモノなのかよ! そんな話を聞いてないぞ、マジかよ!」
「そうなの? お前らは知ってた?」
「初めて知ったぞ。ソレは編集長から内容を書き写せって渡されたモノだし……。」
「ちょ、何を言っているの?」
「愛梨、ここにいる栗鼠やデグーといった小動物系の獣人達は、何も知らずに雇われたアルバイトって感じかも……。」
魔獣幻獣大図鑑――と、そんな題名の本の内容、そして挿絵を書き写していたのよね。
で、その魔獣幻獣大図鑑を私が取りあげたので、なんだかんだと、殺気立った視線を感じるわ!
でも、妙なのよねぇ……。
二階にいる魔獣幻獣大図鑑の内容と挿絵を書き写すことに勤しんでいる小動物系の獣人達の物言いを聞いていると、なんだか妙な感じがするわ。
自分達は何も知らない、盗まれたモノだってことを初めて知った――と、まるで何も知らずに雇われたアルバイトの言いワケって感じだし――。
「さて、これは私が回収しますね、ごすずん。」
「うん、魔導書は迷宮図書館ってところに保管しておいた方が無難ね、アシュペリウス……って、誰!」
「あ、私ですよ、ごすずん。所謂、人間形態です。」
「そ、そうなんだ。アンタは人間の姿にもなれるのね。」
むう、アシュペリウスは人間の姿の変身できるようだ。
まったく、最初から人間の姿で現れろっての!
ちなみに、人間の姿に変身したアシュペリウスの姿だけど、犬耳についた黒いパーカーと半ズボンという格好をした小柄な金髪碧眼の少年の姿である。
「じゃあ、渡しておくかな。」
うん、なんだかんだと、魔獣幻獣図鑑はアシュペリウスに預けておくべきね。
魔導書の類は、アシュペリウスが管理人を務める迷宮図書館など然るべき場所に保管するのが一番イイと思うしね。




