外伝EP05 迷宮図書館管理人と四十人の盗賊 その3
「バザー会場の裏手とはいえ、かなり広いわね。」
「うん、エフェポスの村の周辺は、無駄に広い場所が多いから、そこら辺は仕方ないわ。」
「おっと、そんな話はともかく、例の白ずくめの男が案の定、バザー会場の裏手まで私達を追ってやって来たぞ!」
「う、ホントだ! しかし、何者なのかしらね。アイツは……。」
何故、私達を監視し、そしてつけ回すのやら――。
そんな私達の背後を赤いリボンのついた白いシルクハットをかぶり、白いスーツの上下の上から白いロングコートを羽織る白ずくめの男が、ぴったりと……。
さて、そんな怪しい白ずくめの男を人気の少ないバザー会場の裏手へと誘き寄せたって感じの状況下である。
で、スカアハさんにはイイ考えがあるらしいけど、一体、どんな作戦が……。
よし、訊いてみよう、話はそれからだ。
「ねえ、スカアハさん、イイ考えがあるって言っていたけど、何かしらの作戦でもあるの?」
「作戦? ンなモノはない。」
「えっ⁉」
「ああいうストーキングが大好きな野郎は、鉄拳制裁……ボコボコにブチのめすのが一番! んじゃ、早速……おらあっ!」
「ふえええ、やっぱり、そういう流れになるんですかっ!」
む、むう、イイ考えって、あの白ずくめの男を鉄拳制裁とばかりにぶん殴ること⁉
そ、その前に何者か?
そして何故、私達を監視し、つけ回すのか?
その理由を訊いてからでも……。
「わ、わあああ、お待ちくださいィィィ~~~! 監視し、つけ回したことは謝りますから、暴力は……ぶ、ぶべらっ!」
お、お待ちくださいって――コイツ、私達と敵対する気はない感じの物言いだけど、本当かな?
あ、だけど、そう言った直後、音もなく歩み寄ってきたスカアハさんの放ったコンクリートのブロックも容易に破壊してしまうような大口径の某拳銃から発射されたマグナム弾のような右ストレートが、グシャッ――と、そんな破裂音を奏でながら、顔面を穿つのだった。
「わ、わあああっ! 顔面に穴が開いちゃってますゥゥゥ~~~!」
「む、むう、やりすぎたか!」
「で、ですよー! スカアハさん、やりすぎっ!」
ふ、ふえええ、スカアハさんの右ストレートが直撃した白ずくめの男の顔面の目鼻と両目の間に、大きな穴が!
ほ、本当にマグナム弾のようなパンチだわっ……あ、徹甲弾のパンチと言っても間違ってはいないわね。
「お嬢さん、そんなの騒がずとも、この私なら大丈夫ですよ、ハッハッハ~☆」
「え、えええっ⁉ ど、どういうことです!」
な、なんですってー!
顔面の鼻と両目の間にぽっかりと穴が開いてしまったというのに、白ずくめの男は大丈夫だって言っているわ……ふ、不死身のゾンビですか、アナタは!
「なるほど! 真の姿を隠すための仮の肉体ってワケかな、かな?」
「え、アフロディーテさん、なんです、それは⁉」
「要するに、あの白ずくめの男というのは、あくまでも仮の外見……仮の肉体ってワケよ、愛梨。」
「じゃ、じゃあ、傷ついたのは仮の肉体であり、本当の肉体は無傷ってこと?」
「ま、そういう感じね。」
「はい、まさかにその通りです。この身体は、あくまでも仮のモノなのです。では、真の姿をお見せしましょう。」
な、なんと、白ずくめの男という外見は、真の姿を隠す仮のモノのようだ。
むう、まるで某超人みたいね――と、それはともかく、白ずくめの男は真の姿を見せると言い出す。
う、そんな白ずくめの男の身体から、バキバキという亀裂音が聞こえてきたわ。




