外伝EP04 ゾンビ考古学者と眼鏡少女 その40
「うう、もう食べられません……ムニャムニャ。」
「フフフ、イイ夢を見ているようね。」
美味しいご馳走に囲まれている夢でも見ちゃっているのかな?
ズルズルと涎を垂らしながら、幸せそうな寝言を言い始めるアテナの姿が、軽い破裂音とともに白と青の縞模様のパンツ丸出し状態の美女の姿から、再び梟の姿に戻る。
「さあ、後はアナタだけですよ。お姉様!」
「く、あの役立たずっ! だけど、私には奥の手があるわ!」
「奥の手? まだ足掻くつもりですか? う、地鳴り?」
むう、なんだかんだと、ヘラさんは奥の手を用意していたみたいだわ。
ったく、意外と抜け目がないわね。
と、それはともかく、地鳴りが……な、何か出てくる予兆なのかしら?
「まさかと思うけど、ハニワンがいるの⁉」
「ハニワン?」
「人形兵の一体よ。しかも無駄にデカいのよねぇ――。」
「む、無駄にデカい⁉ わ、なんだ、アレは――ッ!」
う、無駄にデカいハニワンという人形兵がいるようだ。
ソイツがヘラさんの奥の手として用意していた存在なのかな……わ、巨大なシルエットがっ!
「ヒュー……ウワサをすれば影ってヤツね。」
「む、アレって円筒埴輪? あ、小さな手足と目と口があるわね。」
「あら、ホントね。しかし、バランスの悪い姿だこと……。」
「あっちゃん、アイツは埴輪ゴーレムに似てない?」
「似てるという前に、埴輪ゴーレムの方がカッコイイわね。」
え、どこが!?
埴輪ゴーレムっていうと、私がこの世界へ来たときに……と、とにかく、感性がおかしいですよ、アフロディーテさん!
「埴輪ゴーレムだと!? フン、どんなモノかのしらないけど、私の奥の手……ハニワンカスタムの方がカッコイイに決まっている!」
「ハニワンカスタム⁉ ああ、道理で私の知ってるモノと姿が違うなぁと思っていたけど、やっぱりアレを改造していたのね、お姉様。」
ドーンッ――と、私達の目の前に、円筒型の身体に丸い三つに穴――両目と口、それに小さな手足が生えた奇妙な巨人が現れる。
コイツがヘラさんの奥の手である人形兵ハニワン――いや、ハニワンカスタムのようだ。
「ハニハニハニィィィ~~~!」
「わあああ、動き出した!」
「愛梨、何ビビっているんのよ! こんな奴、一撃で――美神拳……飛翔脚! い、痛っ!」
う、ハニワンカスタムが不気味な絶叫を張りあげながら動き出す。
巨大な円筒型の身体とは裏腹な生えた小さな左右の足が前に移動する度に、ズズンーッ――と、地響きを響きわたる。
さて、そんなハニワンカスタムに対し、合体し、ひとつの身体を共用するアフロディーテさんが飛び蹴りをぶちかます――が、硬い! とにかく、硬いわ、コイツ!
むう、例えるなら鋼鉄の柱や壁を蹴飛ばしたって感じの感触だったわ。
「ハハハ、無駄なことをする。ハニワンカスタムの円筒型の胴体に使われている素材は、オリハルコンと鋼鉄の合成金属よ! 破壊なんて無理無理~☆」
「ま、贅沢ね! オリハルコンはタダでさえ希少な金属なのに……。」
「そうだ、そうだ、贅沢だわ、姉上!」
「フ、贅沢も我がステータスよ! ワッハッハッハ~☆」
「だけど、それが逆に弱点かもしれないわね。ヘラさん、気づいているかしら?」
「なんですって⁉」
え、弱点⁉
私にはさっぱりだけど、アフロディーテさんは希少金属のオリハリコンと鋼鉄の合成金属の身体を持つ堅牢な巨人である人形兵ハニワンカスタムの弱点を見つけちゃったワケ⁉




