外伝EP04 ゾンビ考古学者と眼鏡少女 その37
「なんですとー! 何故、吾輩の歌を聴いたモノは、皆、昏倒してしまうんだァァァ~~~!」
と、ダンブレは腑に落ちなそうに叫ぶ。
ま、まあ、そうでしょう……。
音程が歪みに歪みまくっていて、まるで地獄の亡者の呻き声、或いは悪魔の絶叫とか、そんな禍々しいモノに例えても別段、間違っちゃいないような地獄の轟って感じだしねぇ……。
それはともかく、ヘラさん一味は、そんなヘラさん以外、ズギュウウウン――と、一斉に昏倒しちゃったわ!
しかし、音痴でド下手なダンブレの歌に、こんな効果があるとは意外だったわ!
「愛梨、この場から移動しなくて助かったわね。」
「え、どういうことです、ウェスタさん?」
「説明しましょう。ダンブレの歌を間近で聴くと、生物なら脳細胞がやられてしまうわ。ああ、人形兵のような人造物なら動力部である核がイカれちゃうわ。」
「ななな、なんて凶悪な歌なのよ!」
ちょ、なんて歌なのよ!
ダンブレの歌は生物が聴いた場合、脳細胞がやられるだって⁉
オマケに、人造物である人形兵の動力部である核にもダメージを与えるなんて、まさに悪魔の歌だわ!
「く、なんて酷い歌なのよ。某ガキ大将の歌よりも最悪じゃん!」
「う、ヘラさんは平気そうですよ……。」
「そりゃそうでしょう。駄姉の歌もダンブレ並みだし――。」
「な、なるほど、類は友を呼ぶって感じなのね……え、だから効果なしなんですかー⁉」
え、ヘラさんの歌もダンブレの歌に勝るとも劣らぬ音痴でド下手なの⁉
うーん、だから、彼女はダンブレの歌を聴いても平気だったのかな……かな?
「よぉし、今が駄姉を捕らえるチャンスかもしれないわね……うりゃーっ!」
確かに、今ならヘラさんを捕らえるチャンスかも――と、ウェスタさんは動く。
と、先端に星型の分銅がついた青いロープをヘラさんを標的に投げ放つ!
「キャ、キャアッ! な、何よ、このロープはっ……う、ヘスティア! 何故、ここに!」
「ハロー、お姉様~☆ 私達を――いや、この私を一時とはいえ、捕らえ牢屋の放り込んだリベンジをさせてもらいます! それーっ!」
「キ、キイイッ! 油断したわ!」
シュルシュル……キュピッ――と、ウェスタさんが投げ放った先端に星型の分銅がついた青いロープが、ヘラさんの華奢な身体を巻きつく。
う、その刹那、まるで生きているかのように蠢いて彼女の身体を大蛇が獲物の身体に巻きつき拘束するかのように絞めあげる!
「さぁて、お姉様。このノダート遺跡から立ち去ることを誓うなら、その身を拘束するロープから解き放ってあげるわ。どうしする、どうします、どぉする~アナタならどうするぅ~?」
「ぐ、ぐぬぬっ! 誰が出ていくか! ここは私が偶像としての活動拠点。そして新居にもする予定でもあるんだからっ!」
「新居ですって? ポース山の神殿はどうするんです?」
「あそこは飽きた。寒いし、周りに何もないし、超暇だし! だから、近くに面白いモノがいっぱいある〝ノダート遺跡〟を新居にすると決めたのよ!」
「だからといって、ここを菜園に利用しているエフェポスの村の連中を追い出すような非道な行為が許されるとでも?」
「そ、それは……と、とにかく、私はここから出て行かないわよ!」
ノダート遺跡から出て行けば解放する――と、その身を拘束する青いロープからの解放条件を言い放つウェスタさんに対し、ヘラさんは毅然と言い放つ。
と、そんなヘラさん曰く、ノダート遺跡を偶像としての活動拠点であり、新居にもする予定のようだ。
しかし、だからといって、ここを菜園等に利用している兄貴さんやヤスさんのようなエフェポスの村の住人を追い出すってことは、確かに非道な行為である。
「クククク……しかし、馬鹿ね。彼女のことを忘れているだなんて油断したわね!」
「ん、彼女⁉ あ、ああ、ノネズミヒコさんとシロウサヒコさんがっ!」
「う、アテナッ! 昏倒したんじゃなかったの!」
う、確かに油断したかも――。
ヘラさんの仲間は、みんなダンブレを歌を聴いて昏倒したと思ったのに、まさかヘラさんと同じくまるで何もなかったかのように健在なモノがいたなんて――。
と、そんな健在だったモノ――赤いチェック柄の可愛い上着を着たアテナという名前の梟の右足の三本の鋭い鉤爪が鼠獣人のノネズミヒコさんを、そして左足の三本の鋭い鉤爪がシロウサヒコさんを捕え拘束している……ちょ、いつの間に捕まったワケ⁉




