外伝EP04 ゾンビ考古学者と眼鏡少女 その36
さてさて、私達は真っ赤な林檎の実がたわわに実る木が、あっちこっちの見受けられる庭園の奥に舞台が見える。
そういえば、ここはすでにノダート遺跡の中核である舞台がある区画だったわね。
当然、ヘラさんも――あ、いた!
派手な衣装を着た可愛い女のコ――ヘラさん発見!
でも、同じような格好をした女のコが数人いるわね。
もしかしてヘラさんをリーダーを務めるアイドルユニットってヤツ?
「いきなり彼女のもとに行くと危険ね。一旦、物陰に隠れて様子を見ましょう。」
「うん、そして隙があれば、この私が駄姉を捕縛します!」
さてと、ヘラさんを発見したところで迂闊に動くと危険だわ。
今はアフロディーテさんやウェスタさんの言う通り、様子をうかがいつつ隙を突く作戦と洒落込みましょうか!
「そこっ! 動きが鈍いわ!」
「ふええ、そんなぁ!」
「フン、鈍くさいわね! 仕方がない。この私が見本を見せましょう……こうやって踊るのよ! 素早くしなやかに、そして湖面を華麗に軽やかに舞う白鳥のように!」
「こ、こんな感じですか?」
「ま、そんな感じね。さっきよりはイイ動きね。じゃ、次のレッスンに移行するわよ。」
「むう、何故、この私まで、こんな格好をしなきゃいけないのだ。腑に落ちないぞ、まったく!」
物陰からチラ見した感じだけど、なんだかモメてない?
ヘラさんは怒鳴り声を張りあげながら、ユニットを組んでいるコ達に躍り方の指導を行っているようだし……ん、可愛い赤いチェク柄の上着を着た白い梟も一緒にいるわね。
「あの梟……アテナ⁉ 面倒くさい奴が一緒だわ。」
「面倒くさい奴⁉ 強化型の人形兵だったりします?」
「ん、アテナはヘラさんの周りにいる人形兵の仲間じゃないわ。私達と同じ生物よ。」
「そ、そうなんだ……って、ハウンドって人形兵もいっぱいいるわね。」
「ついでに、イーリスって名前の孔雀もいるわ。」
赤いチェックの可愛い上着を着た梟の名前はアテナっていうのかぁ――って、そんなこより、あのハウンドって人形兵が、主であるヘラさんを警備するかのように彼女の周囲に何体も控えているわね。
ついでに、イーリスって孔雀を筆頭とした数羽の孔雀もボディーガードとばかりに、主であるヘラさんの周囲にいるわね。
「徹底した防御態勢ね。」
「私達が、ここに来るかもって警戒している証拠ね、あっちゃん。」
「で、どうするのさ、あっちゃん? ハウンドやイーリスをどうにかしないとヘラさんを捕縛できないわよ。」
「隙がないわね。ウェスタ、何か策はあったりする?」
「うーん、無理、邪魔者が多すぎ!」
ヘラさんの徹底した防御態勢には、本当に困ったモノだわ。
ハウンドは量産型の人形兵というワケで、無駄に多いし、イーリスって孔雀とその仲間の孔雀やアテナって梟もいるので、本当に隙がないわね……いや、隙ができるのかどうかわからない状況だわ。
「姫、ここは吾輩に任せてくれたまえ!」
ん、ダンブレがそう言い放つ。
そういえば、ウェスタさんの改造されて味方になったんだっけ?
うー、でも、まだ信用できないかも……。
「お嬢さん、我輩のことを疑っていますね。」
「え、それは……。」
「図星かな? まあいいでしょう。私が味方となった証拠を見せるとしましょう。」
「証拠!?」
「歌よ。ダンブレが今から歌うのよ。それが味方となった証拠となるわ、愛梨。」
え、ダンブレが今から歌う!?
ちょ、それのどこが味方となった証拠となるワケ?
う、うん、とりあえず、様子を見ておこう。
「では、歌いますぞォォォ~~~! ボエェェェ~~~!!」
「ダンブレが物陰から飛び出したわ。まさか、ヘラさん達の前で歌うワケ……ヒ、ヒギイイッ! なんて音痴でド下手なのよ!」
「あら、アナタは人形兵の……ウギャアアアッ! なんて酷い歌いなのかしら! 頭が割れるっ!」
ダンブレは勢いよく物陰から飛び出すと、一路、ヘラさん達のもとへ移動し、ご自慢の歌を披露する……が、トンでもなく音痴だ!
ふえええ、頭が痛くなってくるド下手な歌だ……吐き気が、吐き気を催してきたわ!
「ギ、ギギギッ……機能停止、機能……停止……。」
「あ、ああ、ヘラさんの周りにいる人形兵ハウンドが動かなくなったわ!」
「お、梟のアテナやイーリスとそのお仲間の孔雀達が口から泡を吹いて気絶しちゃったわよ!」
え、えええ、何が起こったわけ!?
ダンブレの音痴でド下手な歌を聴いたせいかはわからないけど、ヘラさんを守護するように、その周りにいる人形兵ハウンド達が突然動きを停止し、さらに孔雀のイーリスや梟のアテナは、ブクブクと口から泡を吹いてドサッと昏倒しちゃったわ!




