外伝EP04 ゾンビ考古学者と眼鏡少女 その34
「手出し無用よ! うらー!」
そう言い放つとアフロディーテさんは、勢いよく私、それにウェスタさんと一緒に身を潜める袈裟懸けに切り倒された林檎の木の陰から飛び出すのだった!
「そ、そこのダンディーなおじさま! 私はここよ!」
「む、むっはー! なんと人間ではなく美味しそうなアヒルちゃんの気配だったのか!」
「お、美味しそうって……。」
「アヒルの皮を食べる絶品料理があるのだ。それを知らぬとは不幸もいいところですぞ!」
「し、知りたくもないわ! そんな料理っつうか、私はアヒルじゃなくて白鳥よ、白鳥!」
「嘘吐きは泥棒の始まりですぞ、アヒル殿。」
「嘘じゃないっつうの! おっと、そんなことより、私達は敵じゃないわよ。ほら、見てわからない?」
私は食べたことがないけど、確かに調理したアヒルの皮を食べる料理があるわね。
まあ、それはともかく、あんな安易な説得でいいのかなぁ……と、私は袈裟懸けに切り倒された林檎の木の陰から、息を殺しながら、様子をうかがうのだった。
「うむ、確かに敵ではなさそうだ。」
「で、でしょう? アハハハ、流石は紳士!」
え、嘘でしょ……説得できた⁉
オマケに、禍々しい紫色のオーラが消え失せる――が、本当に説得できたのか心配になってきたわ。
アフロディーテさんを騙す演技かもしれなし――。
「よ、よし、アンタをスカウトするわ。一緒にヘラさんをここから追い出しましょう!」
「な、なんですとーっ!」
「ひゃ、ひゃわあー!」
むう、アフロディーテさんがヘラさんの名前を口にしてしまったせいだろうか?
ボッ――と、ダンディーヘッドとブレイディーという二体の人形兵の合成物の刃の部分から、再び禍々しい紫色のオーラが吹き出す。
で、そんなダンディーヘッドとブレイディーという二体の人形兵の合成物をダンブレ(仮)と名づけておこう。
「おっと、あの御方の名前を聞いた途端、思わずイラッとしてしまった。紳士としてはあるまじき行為だ……。」
「へ、ヘラさんの名前を聞いて思わずイラッとしてしまったですって?」
お、なんだか意外な反応!
あのヘラさんとの間に、何かしらの確執のようなモノがあったりするのかな?
「ううう、イライラしますぞォォォ~~~! 何かを斬るなり刺すなりしなければ、この苛立ちを抑えることはできん!」
「ちょ、私を斬る気⁉ や、八つ当たりよ!」
ギランッ――と、ダンブレの冷たく輝く刃が一瞬、光った気がする。
で、その刹那、ダンブレは隼が狙いを定めた地上の獲物に対し、猛スピードで空中から急降下してくるかのようにアフロディーテさんに襲いかかってくるのだった。
「アフロディーテさん、危ないっ!」
「あっちゃん!」
「こ、ここは私にお任せを……たあーっ!」
このままじゃアフロディーテさんが串刺しにされてしまう!
な、なんとかしなくちゃ!
私は咄嗟に身を潜めている幹の中ほどから切り倒された林檎の木の陰から飛び出す――が、そんな私と同じくアフロディーテさんを助けようと別の林檎の木の裏から飛び出したメリッサさんが、一足先にアフロディーテさんを庇うように突撃してくるダンブレとの間に立ちはだかる!




