外伝EP04 ゾンビ考古学者と眼鏡少女 その31
「ふう、またここに戻って来るとはね……。」
「ハウンドはいないみたいね。駄姉と一緒に舞台へ移動したのかもしれないわ。」
「そ、それならいいんですけど……。」
「ま、とにかく、ここにいつまでもいたら危険よ、みんな!」
さてと、私達は牢屋だらけの区画から再びノダート遺跡の中核と言っても間違ってはいない舞台へと続き通路へと移動する。
ここでさっき人形兵ハウンドの群れに遭遇し、捕まってしまったワケだ。
そんなワケでアレが再び現れる前に、ヘラさんがいる舞台へと移動しなくちゃ!
「階段が見えてきたっす! つーか、この通路は舞台の西側通路だと思うっす!」
「ん、ヤス、わかるの?」
「モチのロンっす! 俺はこの遺跡の全域を調べ尽しているっす!」
「ヤスは一応、考古学者の刺客を持っているんだぜ。」
「へえ、そうなんだぁ。」
「でも、兄貴は何も資格を持っていないっす。」
「う、五月蠅ぇ! 余計なことを言うなァァァ~~~!」
へえ、ヤスはメリッサさんと同じく考古学者なのね。
兄貴さんの舎弟の兎獣人かと思っていただけに、ちょっと意外ね。
あ、ああ、そういえば、ノダート遺跡を発掘していた時にやって来たヘラさんに追い出されたって言ってたし、考古学に通じているモノであることには間違っていないかも――。
その一方で兄貴さんは、ヤスと違って何も資格を持っていないようだ。
ププッ……これじゃ兄貴分って立場じゃないよね。
「そ、そんなことはともかく! さっさと舞台へ行こうぜ!」
「あ、兄貴、待ってくれっす!」
「ハニエルの奴、逃げたわね。」
「う、うん、とにかく、兄貴さんとヤスを追いかけましょう!」
階段の上から、薄っすらとした太陽光が差し込んでいる。
なんだかんだと、先に駆けあがった兄貴さんとヤスを追いかけなくちゃ――。
「な、なんだ、こりゃー!」
「ちょ、改装しまくりっす! これじゃ元がどんなモノだったのか、まったくわからないっす!」
ん、階段の中ほどまで進んだ時、先に駆けあがった兄貴さんとヤスの声が聞こえてくる。
元のかたちがわからないくらい改装されまくっている⁉
ヘラさんは、階段をあがった先――舞台をどんな風に改装したんだろう?
「う、まぶしいっ!」
「わお、久々の太陽の光だわ。んー、イイ感じ~☆」
「そんなことはともかく、みんな見て! ここは庭園だわ!」
「うん、そんな感じだね。お、美味そうな林檎の実がたわわに実った木がたくさん見受けられるわ。」
私達がやって来た場所は、本当にノダート遺跡の中核である古代世界において剣闘士達が血で血を洗う激しい戦闘を繰り返していたり、または劇場としても機能していたであろう舞台なのか⁉
美味しそうな真っ赤な林檎の実がたわわに実る木々が、所狭しと生い茂る庭園へとたどり着いたワケで――。
な、なるほど、元のかたちがわからなくなっているくらい改装されているってヤスが言っていた意味が、ここに来てやっとわかったかも――。
「ん、皆さんもここへたどり着けましたか!」
「その声はミネルさん! ひゃわっ……ミ、ミネルさんの生首が足許に!」
「ハハハ、悲鳴をあげることないだろう、メリッサ。私もお前と同じゾンビなのだ。この状態でも平気だぞ。」
「そ、そうですが……って、胴体はどこに⁉」
「ああ、それなら、すぐそこの林檎の木の下に……って、皆さん、気をつけてください! 〝空飛ぶ剣〟が近くにいるかもしれません!」
わ、わお、メリッサさんの足許に、お仲間のミネルさんの生首が――。
そ、そういえば、彼女もゾンビだったわね。
だから、斬首され胴体と頭が分離した状態でも平気なワケだ。
それはともかく、〝空飛ぶ剣〟とやらが、私達がいる庭園のどこかに潜んでいるようだ。
とまあ、そんな感じで一足先に、ここへやって来たミネルさんは、ソイツと遭遇し、ザンッ――と、首を斬首されてしまったようだ。




