外伝EP04 ゾンビ考古学者と眼鏡少女 その3
兎天原はケモニア大陸のど真ん中にあり、オマケにもっとも広大な地域である。
そんな兎天原には、何ヶ所か絶対に足を踏み入れてはいけない禁足の地があるようだ。
所謂、聖地を冠する場所である。
とまあ、そのひとつがポース山という場所だ。
ええと、場所は……と、ともかく、ポース山に住んでいるヘラさんという女帝とか貴婦人と呼ばれる御大が、兄貴さんの子分であるヤスという兎獣人が発掘作業を行っていたノダート遺跡という古代の闘技場or劇場を差し押さえたって話を聞く。
「ノダート遺跡へ案内してちょうだい!」
「うわ、やっぱり、そう言うと思った!」
そういえば、件のヘラさんとやらと知り合いっぽいんだよな、アフロディーテさんは……。
そんなワケでノダート遺跡に行きたいって言いそうだなぁ――と、思っていたけど、やっぱりビンゴだったか……。
「え、えええ、やめた方はいいっすよぉ……。」
「あーあー、気にしない、気にしない。」
「うーん、気にしないならいいんすけどねぇ……。」
「よし、私も行きます。件のヘラさんに文句を言ってやります。貴重な古代遺跡で勝手なことをするなーって!」
「ふえ、それはやめた方がいいっす……絶対に!」
「でも、考古学者として許すワケにはいかないのです! あああ、ノダート遺跡の景観がメチャクチャにされないか心配ですよぅ!」
ん、メリッサさんが一緒に行きたいと言い出す。
考古学者として、ノダート遺跡を差し押さえたヘラさんに文句を言ってやりたいそうだ。
「その前にメリッサさん。」
「はい?」
「そのノダート遺跡へ行く前に、もげた右腕を修復しなくちゃ……。」
「あ、そのことをすっかり忘れていました、テヘ☆」
むう、生ける屍ことゾンビになると、身体から痛覚が失われるようだ。
私が知っている映画やアニメなんかの設定――創作モノと同じみたいね。
まあ、そんな身体なワケでメリッサさんは、右腕がもげた状態であることをすっかり忘れていたようだ。
ちなみに、メリッサさんのもげた右腕――二の腕から下の部位だけど、釣ったばかりの新鮮な魚のようにビクンビクンと飛び跳ねていたりするのよねぇ……。
「ん、では、早速、私のもげた右腕の修復をお願いします、キョウ様……ふ、ふえ、いない!」
「あ、ホントだ! さっきまで、そこにいたと思ったのに……。」
「キョウならフィンネアやアシュトン、それにエイラと一緒に食堂へ向かったぞ。」
「『もげた右腕はウミコか大フレイヤにでも修復してもらってくれ!』……と、そんな託を預かったのぞ。」
「ふええ、キョウ様、酷いっすぅー!」
ムムム、キョウさんって無責任かも……。
食堂へ行く前に、せめてメリッサさんの右腕を修復してあげればいいのに……。
「あ、あのぉ、私の右腕を修正できませんか?」
「無理!」
「私も当然……。」
「むう、仕方がないですね。では、ウミコさんの屋敷へ行ってきますので、ノダート遺跡へ行くのは、その後にでも!」
ふむふむ、キョウさん以外にも、ゾンビであるメリッサさんのもげた右腕を修復できるモノがいるようね。
「さてと、メリッサが戻ってくるまで、そこの喫茶店で待機していましょうか――。」
「うん、そうですね……って、やっぱり行くんですね……。」
ふう、なんだかんだと、本当にノダート遺跡へ行くことになりそうだわ。
それはともかく、メリッサさんが戻って来るまで喫茶店で待機していなくちゃね。




