外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その41
「ええいっ!」
「わああ、ホントに飛び乗るワケェェェ~~~!」
「莫迦、四の五の言ってる暇はないってヤツよ!」
「た、確かにっ!」
りょ、両足が勝手に動くっ!
そして、空飛ぶ巨大な骸骨の背中に飛び乗る。
わ、私の意思ではない……合体し、一体化しているアフロディーテさんの仕業だ。
ま、まあ、だけど、彼女の判断は適格かもしれないわ。
なんだかんだと、その大きさが百メートルは確実にある超巨大カラクリ人形であるヒュドラスの巨神像が、頭の天辺が崩れ落ち始めたワケで、いつまでもそこにいたら私達は真っ逆様に地上へ落っこちていただろうし……。
さてと、あっと言う間に、ヒュドラスの巨神像の上半身が崩れ落ちる。
千年以上という悠久の年月を放置したツケが回って来たとはいえ、もったいないなぁ――と、私は思うのだった。
「うっわぁ、上半身がバラバラに崩れ落ちたわ!」
「ヒューッ……い、いつまでも、ヒュドラスの巨神像の頭の天辺にいたら危なかったわね!」
「むう、そうは言うが沙羅、お前は空を飛べるから大丈夫だろう!」
「そうだ、そうだ! お前は真っ黒な烏だろう? 俺は兎獣人だから空なんか飛べないっつうの!」
「うう、しかし、考古学的に貴重なモノが壊れてしまった……。」
「メリッサ、何故、真っ白く燃え尽きたように落ち込んでいるのじゃ?」
「ア、アハハ、確かにアレは考古学者であるメリッサさんにとっては調べ尽してみたいモノかもしれないわね。」
「はい、古代人がつくったカラクリ人形ですもの興味津々でした……。」
「つーか、残骸を調べればいいじゃん。」
「あ、それもそうですね~☆」
「コイツ、急にハイテンションに……さて、みんな無事っぽいわね? あ、ボリスの奴がガシャドクロの右足の親指にしがみついている! 蹴落としてやろうか?」
「さ、流石に、それは可哀想かも……。」
ふう、みんな四の五の言わずガシャドクロの背中に飛び乗ったようだ……これで安心!
ついでに、ボリスの奴もしぶとくガシャドクロの右足の親指にしがみついて難を逃れたようだ。
「さ、エフェポスの村へ戻るわよ!」
「そうね、それもそうね。んじゃ、ガシャドクロ航空形態!」
「きょ、巨大骸骨が巨大骸骨〝船〟に変化した!」
うーん、空飛ぶ幽霊船って感じだわ。
私達を背中に乗せたガシャドクロが、刹那の一瞬で船に変化する。
ガシャドクロは巨大な骸骨である――とまあ、そんなワケで変化した船も、当然、骸骨船である。
波間を彷徨う幽霊船って感じに見えるわね。
「ところで愛梨。」
「ん、なんです?」
「アンタはこれからどうするつもり?」
「どうするって言われてもなぁ……。」
これからどうする!?
アフロディーテさんが、そう訊いてくる……う、困ったぞ。
なんだかんだと、私は別世界からやって来た異邦人である。
そんなワケで帰る場所が……いや、帰ることなんできないのが実情なのよね。
「ま、エフェポスの村へ行ってから考えましょう。」
「う、うん、そうですね……。」
むう、そうね、エフェポスの村へ到着してから、じっくりと今後について考えてみよう……。
だけど、ある意味で元の世界に戻っても、〝また〟嫌な目に遭うに決まっているし、この世界に根を下ろすのもいいかなぁとも思い始めていたりする。




