外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その34
あるぇー?
気づけば、ボリスの子分であるネコ団の構成員やヒュドラス教徒の連中が、一人残らずいなくなっているんですけど……。
ネコ団な頭目であり、ヒュドラス教の指導者のひとりでもあるボリスが死んだと思って逃げ出したのかも!?
「うはあああ、死ぬかと思った!」
「わお、声まで変わっているわね。」
「う、うん、虎獣人の時は野太いオッサンのような声だったのに、人間の姿になると声が可愛くなるモノなんだね……。」
「う、うわあああっ! み、見られてしまった……お、俺の醜い真の姿を!」
アハハハ、それにしてもボリスに関しては意外すぎるわ。
まさか姿が変わると声まで変わってしまったワケだし……。
しかもボリスの真の姿――アフロディーテさんが、ウホッ! イイ少年と口走る程の美少年なのが、超がつくくらい意外すぎる。
オマケに可愛い声だわ。
虎獣人の姿をしている時の声は、野太いオッサンのような声だったのになぁ……。
可愛らしい子猫の鳴き声と吠え猛る猛犬の咆哮ってくらいの差があるわね。
「醜い姿ですって!? そう、物凄く可愛いじゃん。私好みだわぁ、ジュルリ……。」
「ヒ、ヒィッ!」
「アフロディーテさん、涎が……。」
「おっと、建前を言ったつもりだったけど、ついつい本音を口走ってしまった……。」
「アフロディーテさん、ひょっとしてショタコン?」
「お、お前っ! 一人二役という芸風をお得意とするお笑い芸人だな!」
「うーん、それは違うわよ。一種の多重人格ってところかしらね?」
「アハハハ、近いとは思うけど……。」
「うぐぐぐっ……お、俺を馬鹿にしやがって! こうなりゃ奥の手だぜ!」
「わ、揺れ始めたっ……な、何が起きるワケ!?」
あのぉ、一人二役という芸風をお得意とするお笑い芸人じゃないんですけど……。
ま、まあ、そう見えても仕方がないよね……。
と、それはともかく、私達がいる緑色の炎が燃え盛る大釜がある周辺が激しく揺れ始める。
ボリスの奥の手ってヤツが発動したワケ!?
「う、天井がパカッと開いたわよ、みんな!」
「ひゃあ、まぶしいっ!」
「そういえば、まだ昼間だったな。」
「ど、どうでもいいけど、私達がいる辺りが開いた天井に向かって浮きあがってない?」
「ちょ、この辺はでっかいエレベーターみたいな?」
「ち、違うっ……わ、私達は巨大な〝何か〟の頭の上にいるのよ!」
「「「な、なんだってー!」」」
ええええ、巨大な〝何か〟の頭の上にいるって!?
沙羅さんが周囲を飛び回りながら、そう言い始める。
「ちょ、巨大な〝何か〟って一体……。」
「グハハハッ……あの緑色の炎が燃え盛る大釜を中心とした魔神の祭壇の真の姿は、地下に格納された状態の古代のヒュドラス教徒がつくった我らが主神である全知全能の神ヒュドラスの巨神像の頭の天辺よっ!」
「な、なんだってー!」
と、ボリスの哄笑が響きわたる。
ま、まさか、緑色の炎が燃え盛る大釜を中心として空間が、ヒュドラス強の主神様とやらの巨神像の頭の天辺だったとはねぇ……。
で、それが地上へと出ようとしているワケで天井が開いたようだわ!




