EP5 俺、ゾンビを使い魔にします。その4
虎獣人のボリスが、舎弟である狐獣人のコタロウを連れて兄貴とヤスのアジトがあるディアナスの樹海の入り口付近に戻って来たようだ。
しかし、何故!?
むう、でも、なんとなく、その理由がわかったかもしれない。
んで、俺の予想だと、恐らく……。
「証拠隠滅のために戻って来たじゃね?」
「お、俺もそう思っていたところさ。」
フレイヤも俺と同じことを考えていたようだ。
証拠隠滅――殺害したメリッサの遺体を隠すためだ。
なんだかんだと、殺人事件が起きると大騒ぎになるのは、俺が元いた世界と同じなのかもしれない。
兄貴とヤスがアジトとして再利用している元ラーティアナ教の教会があるディアナスの樹海周辺は、エフェポスの村の村人達にとっては、大事な食糧調達場所だったりするワケだ。
何せ、あの村の住人達は、兄貴やヤスのような兎獣人を筆頭とした草食動物型獣人が、猫獣人など肉食動物型獣人よりも圧倒的に多く、そんなワケでディアナスの樹海産の食べられる草花を採取しにやって来る連中が多いらしい。
故に、アジトの周辺は意外と目立つ場所だったりするんだなぁ、これが……。
さて、虎獣人のボリスと狐獣人のコタロウの話し声に、俺は聞き耳を立てる。
「おい、あの人間のメスの遺体がなくなっているぞ!」
「――ですねぇ、旦那。」
「つーこたぁ、生きていたのか!? ううう、安心したっ……ぶあっ!」
「まったく、旦那は心配性ですなぁ! でも、おかしいですねぇ、俺は間違いなく確認したんですよ。死んでるかどうか……。」
え、泣いてる!?
心配性というか、メリッサの遺体がない――そりゃ生きていたってことだ!
と、思い込んでいるボリスが、大声を張りあげて喜びながら泣いているようだ。
うーん、見た目は巨大な二足歩行の雄々しき虎なんだが、なんだかんと、その姿から考えると意外だなぁ……。
だが、残念ながらメリッサは死んだ。
んで、ブックスに記されていた方法を元に、ディアナスの樹海に生息する禍々しい固有種を使った薬をつくり、俺が彼女をゾンビとして蘇られた――とまあ、その真実を教えてやったら、あの虎さんはどんな態度を見せるか気になるところだ。
「旦那ぁ、これで証拠隠滅をしなくていいですね。」
「う、うむ、そこら辺も兼ねてホッとしたぜ。」
「じゃあ、胸を張ってエフェポスの村に戻れますね、旦那。」
「ああ、戻ったら酒をがぶ飲みしたいぜ!」
「ところがどっこい! そうは問屋が卸さないってヤツだぜ!」
「ああ、お前は歌姫のフレイヤ!? つーか、なんでここに?」
「そんなこたぁどうでもいいだろう?」
「ところで虎さん、コイツを見てどう思う?」
「す、すごく無事で良かったと……うお、なんだ、お前は!? それにソイツは、さっき俺が殴り殺したと思っていた人間のメス!」
さて、俺とフレイヤはメリッサをアジトの外に連れ出す。
ボリスと対面させてみたワケだ。




