外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その28
「しかし、気持ちの悪い黄金の像だなぁ……。」
「悪趣味にも程があるよね。」
「でも、持ち帰れば、巨万の富を得られるわよ。」
「うえええ、こんなでっかいモノをどうやって……。」
頭は蛸、身体は人間という異形の黄金の邪神像をここから持ち出し、売りさばくことができれば、確かに巨万の富を得られるだろう。
だけど、宝物庫の中にあったモノを超える大きさなのよねぇ……。
間違いなく二十メートルはあるだろう。
そんな超巨大なモノをアルベガジ葬祭殿の外に運び出すなんて無理。
仮に、運び出すとすれば、何十人も……いや、それ以上の人手を要するだろう。
それはあの黄金の邪神像よりもデカい大巨人のようなモノがいない限り、簡単に運び出せるワケがない。
『コイツを持ち出し、わらわの城をつくるのじゃ! だから巨人化するのじゃ、エイラ!』
『無理無理! この黄金の邪神像は、私の〝元の大きさ〟と同じくらいだし……』
『無茶は承知の上じゃ! ほらほら、早く元の姿に!』
『だが、断る! つーか、ピルケこそ古代の魔術でコイツを外に転送できたりしないの?』
ん、そんな相槌を打つふたつの声が聞こえてくる。
私達以外にも、誰がいるようだ……むう、ネコ団の構成員か!?
「エイラとピルケ! いないと思ったら、そこにいたんですか!」
「え、知り合い……というか仲間?」
ふむ、声の主とメリッサさんは知り合いのようだ。
宝物庫の中にいなかったエイラとピルケという仲間のようね。
「ややや、その声はメリッサではないかー!」
「あ、アシュトンとミネルさんもいますね……ん、ついでに知らないコも一緒です。」
さて、メリッサさんが声をかけると、全身に包帯を巻いた古代のミイラ男……いや、ミイラ女といった感じのヘンテコリンな女の子が駆け寄って来る。
ついでに、白いワンピースと麦わら帽子という格好をした大柄な女のコもやって来る。
「そ、そうだ、イイところに来たのう。この黄金の像をすべて外に運び出すぞ。手伝ってくれ!」
「ふえええ、無理ですってばー!」
「確かに、これを運び出すの無理ねぇ……と、そんなことはともかく、この先にある扉の向こうにキョウとフィンネアがいるようだわ。無論、ボリスの野郎も――。」
「お、おお、そうだ、そうだ! わらわとエイラはキョウを助け出すために、ボリスの後を追いかけて来たのじゃ!」
「うえ、ピルケったら調子がいいなぁ! そ、それより、不気味な音楽が聞こえてくるんですけどっ!」
無理難題を押しつけないでほしいなぁ。
二十メートルは間違いなくある黄金の邪神像を運び出すなんて無理、無理、無理ィ!
と、それはともかく、私達が今いる広場の奥にある扉の向こうから、耳障りな音楽が聞こえてくる。
「うっわ、酷い音だわ!」
「う、うん、気分が悪くなるっ……うりゃーっ!」
こ、これは酷いっ!
まるで黒板を爪で引っ掻いた時に生じるような不快すぎる音だ!
い、一体、どんな楽器が、あんな酷い音を……く、祭壇がある扉を私は勢いよく開ける。
なんだかんだと、確かめてみたくなったからだ――いや、キョウさんを救う一方で、この酷い音……毒音波を一刻も早く止めるためだ!




