外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その26
「ガ、ガフガフ、モオオオッ!」
「はわわ、また立ちあがった!」
「だが、奴は戦闘不能だ。〝脳〟が頭蓋骨の中で激しくバウンドし、上手く立ちあがれん筈だ。」
「の、脳が揺れる? あ、ああ、アステリオスが転倒した!」
うわあ、しつこいなぁ、アステリオスは再び立ちあがる――が、即、両膝をついてうつ伏せに転倒するのだった。
ウサノオさん曰く、脳が頭蓋骨の中で激しくバウンドしたおかげで、上手く立ちあがることができないんだとか――。
「ウガアア、ウモモモッ!」
「無理をするな。貴様はしばらく動けん状態が続く。」
ウサノオさんは仰向けに倒れているアステリオスをの鼻先に木刀を突きつけながら、奴を冷ややかに見下ろす。
脳ってモノは、なんだかんだと全身の神経を司っている器官である。
オマケに鍛えることができないので、いくらアステリオスが上半身のみだけど筋骨隆々の雄々しい肉体を誇っていても揺れるなどしてダメージを受けりゃ、動けなくなってしまっても当然だ。
「うは、やるわね、ウサノオ! さて、私達も宝物庫の中に入るわよ、愛梨!」
「う、うん!」
さてと、アステリオスが動けない間に宝物庫の中に入り込むべきだわ。
「わお、黄金の像がいっぱい!」
「でも、頭が蛸みたいな不気味な形状だよ、アフロディーテさん……。」
「うーん、所謂、邪神像というヤツね。」
「あ、それより美人だけど貧乳のお姉さんがいます! あのお姉さんがキョウ様って人ですか、メリッサさん?」
「彼女はミネルさんです。キョウ様はもっと貧乳です!」
「うは、それ以上、言われると立つ瀬がないわ……。」
「あ、あれぇ、そんなことより、キョウ様のお姿が見受けられないのですが……。」
「キョウ様なら、ついさっきボリスがフィンネア共々、別の場所に連れて行ったわ……。」
「な、なんですとー!」
「エイラとピルケもいませんなぁ……。」
「アイツらは気づいたらいなかった。ここに放り込まれる前にはぐれたのかもしれない。」
ヒュー……流石は宝物庫と言われる部屋だわ!
売れば巨万の富を得られそうな大きさが、大体、四、五メートルくらいの黄金の像が、あっちこっちに鎮座しているワケだし――が、そんな黄金の像は、身体は人間でも頭は蛸である。
アフロディーテさんは邪神像だって言うけど、まさにそんな感じの異形のモノである。
うーん、アルベガジ葬祭殿をつくった連中って、ひょっとして邪教徒ってヤツ?
おっと、それはともかく、美人だけど貧乳のお姉さんの姿が見受けられる――キョウ様とやらではなくミネルさんという方のようだ。
で、美人だけど貧乳のお姉さんことミネルさん曰く、ついさっきフィンネアってコ共々、ボリスが連れ去ったようだ。
う、もしかして入れ違いで!?
運の悪いタイミングで宝物庫の中に入ったもんだなぁ、まったく……。
そういえば、他にもエイラとピルケという仲間もいるようだけど、どうやらはぐれてしまった様子。
「クラット達、ボリスはどこにいるの?」
「ああ、頭目なら恐らく祭壇のところにいるはずだニャン。」
「祭壇? 何かしらの儀式でも行っているワケ?」
「さあ、そこまではわからないニャン。ただ、ボスは〝誰かを蘇らせたい〟って言ってたニャン。」
「誰かを蘇らせたい? なるほど、キョウとフィンネアを連れ去ったのは、そのためかしら?」
ネコ団の頭目である虎獣人のボリスは、何者か蘇らそうと目論んでいるっぽいわね。
で、そのカギを握るのが、私はまだ会ってことがないけど、キョウさん、それにフィンネアさんのようだ。




