外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その18
「うおおおっ! 貴様ら、皆殺しだ! 八つ裂きにしてくれるわっ!」
「わ、猫ちゃんが分身した!」
「ぐはははっ! これぞ、分身殺法よ! 死ねィ!」
「だけど、コイツの前には猫ちゃんは無力化する!」
「ご、ごあっ!」
ボリスが差し向けてきた刺客、左右の前足の鋭い鉄の爪を装備した黒猫クラッシャーキャット——略してクラットの身体が、シャシャシャシャッと分身する。
その数、十匹……まさに分身殺法である!
だが、私と一体化しているアフロディーテさんは動じない……いたって冷静である。
で、そんなクラットに対し、粉末状の何かをぶつけるのだった。
「お、おい、テメェ、この粉末は……フ、フニャッ! 両足がフラフラしゅるしゅる……ウイイーッ!」
「よ、酔っ払いみたいにグデ~っとして倒れた!? あ、ああ、わかった! アフロディーテさん、あの猫ちゃんにマタタビの粉末をぶっかけたんでしょう?」
「ピンポーン! 大正解よ、愛梨!」
「むう、やっぱりね。猫ちゃんを酔っ払わすといえば、あのマタタビでしょう~~~!」
「マタタビかよ、む……無念っ……ゲブハッ!」
「な、何故、吐血っ!」
「鉄の爪を奪い取っておこう。」
「こういうモノは取りあげておくのが一番だしね。」
ええ、何故って感じである。
で、クラットはゲブハッ——と、何故か吐血し、ひっくり返る。
むう、マタタビの粉末を吸い込んだだけなのになぁ……。
さて、沙羅さんとアタランテさんが、何故か吐血してひっくり返ったクラットから鉄の爪を奪い取るのだった。
「ちょっと小さいけど、コイツを身につけておくかな。」
「じゃ、私も身につけておこう。」
え、クラットから取りあげた鉄の爪を流用するの?
まあ、使えるモノは利用しないとね。
そんなこんなでアタランテさんと沙羅さんは、鉄の爪を見つけるのだった。
「ふう、五月蠅い奴をなんとかできましたねぇ。」
「ひっ……アシュトンさんでしたっけ? 動く骸骨のアナタの姿は心臓に悪すぎです。」
「そうかい? 最初は嫌だったけど、最近は気に入っているんだがなぁ、肉が一切存在しない故、身軽に動ける、この身体が——。」
「そ、そうなんだ。アハハ、そうだよね。余分な肉がない分……って、柱の陰に隠れいないで深奥へと案内お願いしますよぅ!」
「お、おう!」
頭以外を重厚な甲冑で覆う動く骸骨ことアシュトンさんは、再び私達を深奥へと案内しようと先行して進み始める。
さて、さっきのクラットのような資格がいなきゃいいんだが……。




