外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その16
「ちょ、どうしよう、アフロディーテさん。当然、奴を追いかけますね?」
「当たり前よ! 言わずもがな!」
「でも、罠だったりしない?」
「可能性はありそうですね。ですが、このままだとキョウ様達が……。」
「まあ、とにかく、中に入ってみよう。」
「そうだ、懐中電灯ならあるぜ。」
わお、懐中電灯じゃん!
ん、兄貴さんの左手には、いつの間にかカボチャのランタン風の懐中電灯が——。
へ、へえ、幻想の産物のようなモノだと思う魔術が存在する幻想世界風の世界観だけど、懐中電灯のような文明の利器ってモノもちゃんとあるみたいね。
さてと、なんだかんだと、ネコ団のアジトである洞窟——アルベガジ遺跡の中へと逃げ込んだ頭目ボリスを追いかけるかたちで、私達もアルベガジ遺跡へと足を踏み入れるのだった。
「真っ暗ね。そして広い……。」
「というか、ランタンが足りないわね。」
「ああ、大丈夫よ。ぬふぅ!」
「わあ、沙羅さんの両目が懐中電灯のように光を——。」
アルベガジ遺跡は、洞窟内そのモノが遺跡のようだ。
私が今いる辺りには、不思議な幾何学模様が刻まれた柱が見受けられるしね。
だけど、ここはまだまだ入り口である。
そんなワケで奥へ行けば、さらに——と、それはともかく、沙羅さんの両目が、煌々と輝く。
わお、生きた懐中電灯だわ!
「さて、これで安心して先に進めるわね……ヒ、ヒィ! う、動く骸骨がやって来た!」
重厚な全身甲冑を身に纏った動く骸骨が、両手を振りあげた状態でやって来る。
コ、コイツはボリスの子分……ネコ団の構成員なのか!?
「わああ、アシュトン君じゃん! まったくぅ、ビックリするじゃないか!」
「え、知り合いなの……メリッサさん?」
「はい、同じくキョウ様に仕えるモノです。で、彼は動く骸骨のアシュトン君です。」
「は、はあ……。」
むう、ネコ団の構成員じゃないのね、この動く骸骨は——。
で、メリッサさんのお仲間のようだ。
さて、彼女が仕えているキョウ様って人物は、死者を操る存在なのかしら?
ゲームなんかでお馴染みの死霊使いだろう——と、予想してみるかな。
「他にも動くミイラなんかもいたりして……。」
「いますよ。ピルケって名前のミイラ娘が——。」
「わお、マジですかー!」
ふえええ、動くミイラまでいるワケ!?
ふ、不死者だらけだ、メリッサさんの周囲は……。
「ん、ところでアシュトン君は上手く逃げて来たって感じ?」
「ま、そんなところだね……って、おおい、そんなことより、この洞窟の深奥に凄い古代遺跡があるぞ! あ、ああ、そんな凄い古代遺跡にキョウ様達が捕らえられているんだ!」
「えええ、凄い古代遺跡!? 考古学者として超気になるんですけど!」
「メリッサさんって考古学者なの?」
「はい、若き天才考古学者です!」
うーん、自分でそれを言うあたりから自己陶酔の領域に……。
まあ、とにかく、アシュトンという動く骸骨の話が本当なら、アルベガジ遺跡の深奥には、何やらトンでもない遺跡群がありそうな感じだ!




