外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その13
「アフロディーテさん、何か策である?」
「ないわよ。」
「ちょ、即答ですかーっ!」
「でも、猫ちゃんの弱点になるモノなら、すでバラ撒いているわ! きっと恍惚とした状態になって動けなくなるわよ!」
「猫ちゃんの弱点!?」
ちょ、何も策がないんですかーっ!
こ、このままじゃ撃ち殺されちゃいますってばー……え、猫ちゃん達ことネコ団の構成員の弱点となるモノをすでにバラ撒いているって!?
「フ、フニャッ……おかしいなぁ? 俺は酔っぱらっているのか? 足元がフラフラと……。」
「ん、どうしたんだニャン? う、うおっ……う、酔っ払ってしまって動けん!」
「お、俺なんて酒を飲んじゃいないぞ? な、何故だニャ……。」
あ、あるぇ~? 私を取り囲んでいるネコ団の構成員達の様子が変だ。
まるでお酒を飲みまくってべろべろに酔っ払った夜の歓楽街を行き交うおじさん達みたいだ。
「猫が酔っぱらう……は、もしかしてマタタビ!?」
「ビンゴよ、愛梨! 粉末状のマタタビを崖の下に飛び降りた時には、すでに撒き散らしていたのよ、フフフ~ン♪」
「へ、へえ、そうなんだぁ……って、胸の谷間に試験管のような硝子の容器がっ!」
な、なるほどォォォ~~~!
猫が酔っ払ったような状態になってしまうとしたら、その原因はマタタビのようなモノじゃないと……って、ビンゴだったようね。
で、でも、アフロディーテさんったら、いつの間に粉末状のマタタビを詰め込んだ試験管を胸の谷間なんかに……。
「う、ううう、貴様らかっ……マ、マタタビの粉末をばら撒きやがったのは!」
「あ、豹の獣人にも効果があったようね。よし、ウサノオを今のうちに——。」
お、ウサノオとかいう兎獣人をアジトである洞窟の奥——アルベガジ遺跡の内部へと連れて行こうとしていた豹獣人にも、アフロディーテさんがばら撒いた粉末状のマタタビが効果を発揮したようだ。
「マタタビはライオンである私にも効果を……フニュウウウ……。」
ちょ、撒き散らした範囲が、なんだかんだと、広範囲だなぁ……わ、私とアフロディーテさんを追うかたちで崖から降りてきた子ライオンのアタランテさんも例外なくネコ科の動物である故に、マタタビの粉末を吸い込んでベロベロに酔っ払ってしまっているわ!
「ふう、なんだかんだと、助かったぞ! しかし、この俺があっさりと捕まってしまうとは、不覚っ……。」
むう、せっかく助けてやったのに、何故かウサノオさんとかいう兎獣人は、ズズーンと落ち込んじゃっている。
「ウサノオはエフェポスの村随一の戦士を自称しているのよ。」
「あ、ああ、なるほどね。だから自分の不甲斐なさに呆れてしまっているのかな?」
へ、へえ、そんな理由で落ち込んでいるんだなぁ……ま、まあ、わかるかな。
エフェポスの村随一の戦士を自称しているワケだし、呆気なく捕まったんじゃ、そりゃ落ち込むよね、アハハハ……。




