外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その11
エフェポスの村の住む無法者——虎獣人のボリスを頭目を務めるネコ団の団員は、主にネコ科の動物で構成されているようだけど、中には人間もいるらしい。
ゾンビのメリッサさんの右腕を斧で叩き斬った男なんかがイイ例である。
ちなみに、あの男だけど、メリッサさんが斧を奪い取って、オマケに荒縄で簀巻きにし、さっきの公園にあった公衆トイレのような場所の中に閉じ込めていたわ。
それはさておき。
「この世界において火縄銃は最新鋭の武器らしいわよ。」
「え、そうなの? 拳銃のような小型の銃もあると思ってた。」
「ん、まあ、ウチらの隊長が持ってるモノは小型だけど、確か南部なんとかってヤツだったかなぁ?」
「うーん、それじゃじゃさっぱりだなぁ……。」
へえ、何はともあれ、最古の銃と言っても間違ってはいない火縄銃が、私が今いるケモニア大陸の兎天原という地域において最新鋭の武器のようね。
さて、なんだかんだと、最古の銃である火縄銃とはいえ、堅牢な甲冑を簡単に撃ち抜くほどの弾丸を発射するモノである。
そんなワケで古いからってナメちゃいけないわね。
『ん、兎臭がする!』
「うっ……。」
と、そんな声が聞こえてくる。
私達がいる小高い丘から一望できる先にある古代遺跡——アルベガジ遺跡の出入り口である洞窟の周辺をうろうろしているネコ団の構成員である猫獣人の声だろう。
ひょっとして、私達が丘の上から様子を見ていることに気づいたのかも……。
「み、見つかった!? 私達が、ここから様子を窺っていることがバレたのか……。」
「お、おい、ハニエル! お前、香水をつけすぎじゃねぇのか?」
「五月蠅いなぁ! アタランテ、お前と違って、俺は香水でいつも身を清めているんだ!」
「うーん、なんだかんだと、それがアダになってしまったのかもしれないわね。」
「待って、見つかったと決めつけるのは、まだ早いわ! アレを見て——。」
「ん、豹の獣人に耳を両耳を鷲掴みにされた兎が……兎獣人が洞窟の中に連れ込まれたわ!」
ふ、ふう、一瞬、ドキーンとしたけど、兄貴さんが身体中にぶっかけている香水の匂いから、私達の存在に気づいていたってワケじゃないようだ。
「ん、あの兎獣人はウクヨミじゃないの?」
「アフロディーテさん、そのウクヨミって誰?」
「エフェポスの村の古老の占い師であり、呪術師でもあるウミコの弟子よ。」
「へ、へえ、呪術師ねぇ。ウミコかぁ、名前が卑弥呼にそっくりね!」
「卑弥呼? あ、ああ、言われてみれば確かに! ん、でも、あの兎獣人はウクヨミじゃない気がする……あ、わかった! アイツの弟のウサノオだ!」
「あ、ああ、ウクヨミにはウサノオって弟がいたわね。でも、なんで捕まったんだろう?」
「さ、さあ、それを私に訊かれても……。」
「それもそうね。さ、なんだかんだと、ウサノオも助けるわよ、合体! とぁー!」
「オ、オエーッ! アフロディーテさん、無茶苦茶だよぅ!」
と、アフロディーテさんが光の球体になって、私の口の中に入り込む……が、合体ですかー!
あ、熱いっ……か、身体が急成長する!
そんなこんなで誕生、魔法少女アイロディーテ(?)!
で、私と合体し、身体の自由を奪ったアフロディーテさんは、ダッ——と、今いるアルベガジ遺跡を一望できる小高い丘の崖下へと飛び降りる!
ウサノオとかいう兎獣人をまずは助けなきゃって魂胆だろうけど、無謀よ、無謀!
確か、今の私の身体は魔力切れという状態なワケだし——ッ!




