外伝EP03 アヒル女神と眼鏡少女 その7
「私と合体した時の姿の方が美しいわね。」
「ま、まあ、胸はもう少し大きい方がいいかな?」
「そうそう! 大きいことに越したことはないわね。それに魔力貯容量は、私と合体した時の方が多いと思うわよ。」
「え、巨乳は魔力タンクってワケ?」
「ついでに魔力増幅炉でもある!」
「む、むう、大きすぎると邪魔だけど、かと言って小さすぎるのも……ま、まあ、とにかく、魔力があんまり残ってないから、今の状態だと魔術は一回使えるかどうかって感じかしら?」
「ま、魔術?」
「うん、私はあっちゃんと違って格闘技は苦手でさぁ! そんなワケで魔術の方が得意ってワケよ!」
へ、へえ、巨乳には、そんな恩恵が……。
さて、胸の大きさはともかく、沙羅さんは格闘技よりも魔術の方が得意な様子である。
そんなワケで今の私の姿は、魔術師形態って感じだろうか?
「ああ、魔術師形態だと、空を飛べるわよ。」
「え、空を!? あ、背中に真っ黒な翼が——。」
お、おお、背中に真っ黒な翼がっ……い、今の私は黒い天使って感じかな!
「私だって飛ぼうと思えば……。」
「あっちゃん、無理をするなァァァ~~~!」
「そういえば、アヒルは空を飛べないんだったな。」
「ペンギンと同じだな。」
「ア、アンタ達ィィィ~~~!」
「そ、そんなことより、アレを見て! 斧を持った大男に眼鏡をかけた女のコが追いかけられているわ!」
アフロディーテさん、アナタは空を飛べない鳥であるアヒルですよ。
とまあ、それはともかく、何やら物騒な事件に発展しそうな修羅場って感じの光景が、私の双眸に移り込むのだった。
「ん、ありゃ、メリッサじゃないのか?」
「ああ、キョウの使い魔のメリッサだな。」
「えええ、使い魔?」
「所謂、魔術師等に使える存在って感じだ。ちなみに、主のキョウって奴とは、同じ屋根の下で暮らしているから、当然、あのメリッサとは知り合いだぞ。」
「ハニエルさ……いえ、兄貴さん、そのメリッサとかいう使い魔は、斧を持った大男と眼鏡の女のコのどっちなのさ?」
「女のコの方だ。ついでに、アイツはゾンビだぞ。」
「な、なんですってー!」
斧を持った大男はともかく、コイツに追いかけられている眼鏡をかけた女のコは、メリッサって名前らしい。
で、ハニエルさんこと兄貴の話では、どうやらキョウという人物に仕える使い魔という存在で、オマケにゾンビだとか……えええ、ゾンビ!?
「ほら、ゾンビだから右腕を切断された状態だけど、あんなに元気の走り回れるのよ。」
「う、うわあ、もげた右腕を左手に持った状態だわ! ゾ、ゾンビって凄いなぁ……。」
さ、流石はゾンビ!
死体が何かしらの原因で蘇った生ける屍というだけあって、例え右腕をもげた状態でも、元気に走り回っていられるのが、ある意味で凄い……凄い光景を見てしまったわ。
「でも、何故、右腕がもげた状態なんだろう?」
「きっと、アイツを追いかけている斧を持った大男にでも……と、愛梨、助けよう!」
「え、助ける!? わああ、沙羅さん!」
ふ、ふええ、助けるって……あのメリッサってゾンビさんを!?
むう、そんなこんなで心の準備が整う前に、私と合体し、一体化している沙羅さんが、身体の自由を奪うのだった。




