外伝EP02 歌姫×歌女神 その44
「コ、コノうさ公! ダ、ダガ、反撃デキン!」
「俺達ハ全身ガコンガリト焼ケテシマッタセイデ身動キガ上手ク……ギャアアッ!」
「チ、チクショー! コ、コノ俺ガ小サナ鼠ゴトキニ!」
今の悪霊共なら、小型動物の俺達——獣人飛行隊の隊員でもなんとかできるレベルである。
奴らは全身くまなくこんがりと焼けてしまったが故、不死身とはいえ、上手く動けなくなってしまっているワケだしねぇ。
「灰になってしまったモノはともかく、焼死体のような状態になりながらもしぶとく蠢いているモノには、これをぶっかけてやる!」
「ん、中フレイヤ、それは花瓶!? 中に水が入っているようだが……。」
「はい、水ですよ。〝ラーティアナ教の教会で清められた〟タダの水です。」
「せ、聖水?」
「まあ、そう呼ぶ人もいるでしょうね。さて、コイツを……えいっ!」
「ギャ、ギャアアアアアッ! アアア、熱イ! 何ヲスルンダァァァ~~~!」
「うーむ、タダの水とはいえ、ラーティアナ教の教会で清められた水は、悪霊共にとっては硫酸と化すってところか?」
「はい、聖なる水ですからね。」
ラーティアナ教か、確か一神教の……まあ、それはともかく、中フレイヤは花瓶に入った聖水を足許にいる悪霊共の一体にぶっかけるのだった。
と、その刹那、ジュッ——と、そんな悪霊共の一体がドロドロと溶け始める。
むう、やはりコイツらにとっては聖なる力を宿す水こと聖水は、触れた物体を溶解する硫酸と同じ効果を発揮するモノと化すようだ。
「ウギャアアアッ! ヤメテクレ! 俺ハ死ニタクナインダ!」
「問答無用です。さっさと、冥界へ戻りなさい。あそこはなんだかんだと、アンタ達にとっては安住の地の筈でしょうが!」
「ソ、ソウカモシレナイケド、セッカク現世ヘ戻ッテクルコトガデキタンダ! モウ少シ……ギ、ギエエエッ!」
「よし、一体、冥界へと還したわ。さあ、次はどいつを——ッ!」
「お、おい、聖水が入って容器を一体、何個、持っているんだよ!」
「わあ、水鉄砲まで!」
む、むう、とにかく、中フレイヤは聖水の入った容器——水鉄砲などが大量に持参している。
おいおい、どこにそんなモノをって感じだぜ。
「さて、残りは……ん、メフィストがいないぞ!?」
「あ、ホントだ! あの野郎、いつの間に——。」
「でも、不死宝珠を置いて立ち去ったので許してあげましょう。」
「な、なあ、そういう問題で済ませてもいいのかなぁ……。」
実体化した悪霊共の残りは、一握りって感じだな。
それはともかく、すべての元凶であるメフィストの姿が、忽然と消え失せている。
中フレイヤは不死宝珠を置いていったので許すとは言うけど、俺的にはアイツを放っておいてもいいのかぁと心配なところである。




