外伝EP02 歌姫×歌女神 その40
「キヒ、キヒヒヒィィ! 俺ハ蘇ッタゾォォォ~~~!」
「オイ、ソノ前ニ何故、蘇ッタンダロウ?」
「ウム、俺モソレガ疑問デ仕方ガナインダ……。」
「ソンナコトハドウデモイイダロウ! 蘇ッタンダ、暴レマクリテェェェ~~~!」
「暴レルノハイイガ、マタ死ニソウデ怖イゾ……ア、モウ死ンデルカラ、ソレハ大丈夫ダナ! ウガアアアアッ!」
何故、蘇ったんだ——と、亡霊共は困惑している。
いや、正確なところお前らは蘇ったワケじゃない。
不死宝珠の力で一時的に実体化したってところだ。
で、よく見れば、身体のあっちこっちが腐敗していたり、一部、白骨化した禍々しい動く死骸という亡霊共の両足が透けている。
状況から考えると、連中は完全に実体化したというワケではないようだ。
「ひゃああ、近づいてきた! ぶ、武器はないのかしら?」
「こ、こら、小フレイヤ! 俺の胸の谷間に手を突っ込むなよ!」
「アンタは胸の谷間に武器を隠していることを私は知っているんだからっ!」
「へえ、そりゃ凄いですね。どれどれ……。」
「だ、だからって、ひゃああ、くすぐったい!」
「まったく、〝ああいう〟連中を倒すなら、イイ武器があるぞ、ウフフフ……。」
「わあああ、それはチェーンソー! あ、危ない、投げ渡さないでよね!」
へ、へえ、大フレイヤは胸の谷間に武器を隠しているのか!?
そんなワケでズボッ——と、小フレイヤと中フレイヤは、大フレイヤの胸の谷間に右手を突っ込むのだった。
それはともかく、多数の小さな刃がついた鎖を動力源に回転する機械の鋸——その名の通りのモノであるチェーンソーをイシュタルが小フレイヤに投げ渡すのだった。
「ほう、チェーンソーというのね、コイツは? ちなみに、聖地アンザスで見つかったモノよ。」
「それは言わなくてもわかる。私も日々、あそこで本来いるべき世界の漂着物を見つけているからね……。」
一度は行ってみたいもんだな、聖地アンザスってところに……。
あそこには俺がいた時代よりも先の時代の漂着物も流れ着くようだし、未来ってヤツを知る術のなるかもしれないしな。
「ねぇ、せっかくソイツを渡したんだし、あの死人共を切り刻んでやれば?」
「え、切り刻めって!? う、うん、やってみる、うりゃあああっ!」
実体化したとはいえ、小フレイヤ達の目の前にいる悪霊共は不死者の類いだ。
果たしてチェーンソーというのかモノで倒せるんだろうか?
と、それはともかく、小フレイヤが起動スイッチを押すと同時に、チェーンソーはけたたましい唸り音を張り上げ、そんなチェーンソー本体に取りつけられた無数の小さな刃が回転し始める。
「ギャ、ギャアアアッ!」
「わ、悪霊の顔面が真っ二つに!」
「テ、テメェ、ヨクモ俺ノ頭を……デモ、全然、痛クナ~イ♪」
「ヒ、ヒイイッ! まるでスプラッターな映画を見ているかのようだわ! はうう、これだから不死者は……。」
小フレイヤが振り回すチェーンソーが、唐竹割りとばかりにクリーンヒットし、実体化した悪霊の一体——悪霊Aの頭をグシャアッ真っ二つにする。
だが、流石は不死者だ。
そんな状態になったにも関わらず平然としているのが恐ろしいところだ。




