外伝EP02 歌姫×歌女神 その34
ケモニア大陸のど真ん中にある区域であり、最も広大な地域でもある兎天原の三割を占めるのが、足を踏み入れた場合、下手をすると迷子になってしまい二度と出られない——と、言われることもあるディアナの森の中を空から見下ろすと、最低でも建造されてから五百年は経過をしている遺跡が、あっちにもこっちにも……数えていたらキリがないくらい鬱蒼とした木々の隙間から顔を出している。
おっと、それはともかく、俺とノネズミコが融合合体している戦闘機の玩具——F15戦闘機の玩具は、かつて兎天原の空から守っていたモノ達こと竜騎士団の墓地でもある一際、巨大な巨大でオマケに先端がチューリップのような形状をしているバルロスの塔という建造物の側までやって来る。
ふう、以前、ここへ来たことがあるけど、相変わらず奇妙な形状だぜ。
「く、しつこいな。どこまで追いかけてくるのやら……。」
「追尾機能がある兵器は面倒くさいのであります。ところで隊長、どこまで飛ぶつもりでありますか?」
「あ、ああ、そろそろかな? それによ~く、ミサイル野郎の様子を見ろ。」
「え、ミサイルを!? む、なんとなくでありますが勢いがなくなってきているような……。」
「ノネズミヒコ、お前にもそう見えるのか? じゃあ、ビンゴかもしれないな。」
お、おお、なんだかんだと、俺の予想はビンゴかもしれない。
え、何がビンゴだって!?
それを今から語るところだぜ。
「俺はミサイル野郎の魔力切れを狙っていたんだ。」
「魔力切れでありますか?」
「うむ、あの手の武器は燃料が尽きるまで飛び続けることくらいお前にもわかるだろう?」
「まあ、それくらいは当然であります! 俺は隊長より詳しいつもりでありますし!」
「おいおい、そりゃ皮肉か? まあいい、とにかく、アレはメフィストの魔力によって動いている故に、無尽蔵とばかりに燃料切れを起こすことなく延々と飛び続け、オマケに追尾機能もある厄介な代物だろう? だが、なんだかんだと、欠点……弱点があるんじゃないかと思ったんだ。」
「え、欠点でありますか? あ、あああ、わかったであります! 隊長はメフィストの魔力が行き届く有効範囲外へアレを——。」
「ああ、その通りだ! だが、問題はアレをどうやって破壊するかだ……そうだ、バルロスの塔が、すぐ側ってことは〝アイツ〟がいる!」
あのミサイルはメフィストの魔力によって動いているモノだが、そんなメフィストの魔力が行き届く有効範囲外へ誘い込めば、自ずと飛行速度の勢いが弱まるだろう——と、思ったが、それがビンゴで幸いだったぜ。
だが、問題は俺とノネズミヒコが融合合体している戦闘機の玩具ことF15戦闘機の玩具には、武器となるモノが搭載されていないことだ。
と、そんなワケで俺は〝アイツ〟を利用しようと思っている。
バルロスの塔に住んでいる〝アイツ〟を——。




