外伝EP02 歌姫×歌女神 その28
竜牙兵の数は、なんだかんだと、十体はいるかな?
まあ、でも、メフィストの野郎がばら撒いたモノ——ドラゴンの牙(?)から、上手い具合に発芽し、誕生した竜牙兵が、この程度で良かったかもしれない。
さて、コイツを迎撃しなくちゃいけない。
うーむ、その前に兎獣人の中でも特に身体が小さいネザーランドドワーフである俺にどこまでやれるか——。
「た、隊長! 銃弾が役に立たないであります! しゃれこうべを破壊しても平気で動き回りますし!」
「それに銃弾が骨の隙間をすり抜けていく!」
ふええ、肉は一切、存在しないスカスカの竜牙兵の身体に銃弾を撃ち込む場合、しゃれこうべのような大きな骨を狙うべきだろう——が、不死者故に頭を失っても活動停止することなく動き回るのが厄介だ。
「こういう場合は鈍器が役に立つわよ!」
「ど、鈍器!? お、おお、鉄パイプか!」
「とにかく……おりゃー!」
おいおい、そんなモノどこから!?
とばかりに、小フレイヤが鉄パイプを振り回す——お、おお、なんだかんだと、効果ありって感じだな!
竜牙兵の身体は意外にも脆いようだ。
カシャーン——と、小フレイヤが振り回す鉄パイプが直撃した途端、床に落下し、砕け散ったガラスコップのように甲高い音を奏でながら、バラバラに砕けるのだった!
「あら、随分と脆いのね。」
「あのメフィストさんがバラ撒いた竜の牙は保存状態が悪いモノだと思うわ。」
「そ、そうなのか? じゃあ、俺でも鈍器でぶん殴れば……わあ、捕まった!」
ぐ、ぐえー! 竜牙兵の一体が、俺の耳を鷲掴む……く、小さな兎獣人では不利なことばかりだな!
「ヤマダさん、今、助けます!」
「えっ……うわあああっ!」
ヴォンッ——空を裂く音が響きく。
今、助ける——と、中フレイヤの声が聞こえたので、恐らく彼女だと思うが、巨大な何かを振り下ろし、俺の耳を掴む竜牙兵をバラバラに打ち砕く!
「ヒッ……巨大な鎚矛! ア、アンタ、凄いパワーだな!」
な、なるほどォォォ~~~!
中フレイヤは金属の柄頭を持つ棒状の武器——鎚矛を持っている。
だが、サイズが普通のモノじゃない!
柄頭の大きさが一メートルはあるだろうか?
それに加え、柄の部分は二メートル近いモノだ。
アハハハ、そんなモノでぶん殴られりゃ当然、脆い身体の竜牙兵は、バラバラに砕け散るようなぁ……。
「あ、コレは魔術で鳥の羽毛のように軽くしてあるんですよ~☆」
「え、マジで!? ちょっと貸してくれよ……お、おお、マジだ!」
え、魔術で羽毛のように軽くしてある!?
うお、確かにな!
だが、いくら魔術で軽くしてあるとはいえ、小さな兎獣人である俺には手に余るモノだな。
「わらわも手伝うぞ!」
「ヤマダ、私も手伝うぞ!」
「隊長、一緒に振り回します!」
「俺も手伝うぜ!」
「うおおお、やってやるぜーであります!」
「よし、みんなの力でコイツを振り回すぞ!」
む、ウミコと兎獣人の姿に戻ったウクヨミ、それにノネズミヒコ達、獣人飛行隊の仲間が、巨大な鎚矛の長い柄を掴む!
よ、よぉし、みんなの力でコイツをぶん回すぞ!




