外伝EP02 歌姫×歌女神 その24
「わ、冷たいっ!」
「鍾乳石から滴り落ちた水じゃ。この程度で驚いてどうするのじゃ!」
「む、むう……。」
さてと、俺達はランタンの灯りを頼りに真っ暗闇の洞窟内を進む。
ちなみに、ランタンであっちこっちを照らすと、大小に問わず数え切れないほどの鍾乳石が見受けられる。
流石は自然の洞窟だなってところだ。
「うへ、なんか奇妙な気配を感じる。幽霊がいるのかな……。」
「ヤマダ、今ビビったでしょう? まあ、墓場だし、そういう錯覚を覚えても仕方がないと思う……ヒィッ!」
「ハハハ、お前だってビビってるじゃないか!」
「なにィィィ~~~!」
「おい、静かにするのじゃ! もうすぐ共同墓地へと到着するぞ。」
「共同墓地に到着する? そこにメフィストって奴がいるのか……ん、光が近づいてくる!」
さっきから妙な気配を感じているのは確かだが、俺はビビってなんかいないぞ。
むしろ、幽霊の方から出向きやがれっ——と、言いたいくらいだ!
と、それはともかく、こちらに向かってくる光が近づいてくる……ん、アレはランタンの灯りか?
「あれぇ? ウミコ様じゃないですかー!」
「え、ヨモツウサヒコ!? 何故、お前がここに?」
「え、ここにって……俺はさっきまで、この洞窟の奥にある共同墓地にいましたが?」
「嘘じゃろう? 洞窟の入り口でわしらと……。」
「はあ? ウミコ様、遂にボケてしまいましたぁ?」
「な、何を言う! むう、妙な話だなぁ……。」
ん、ランタンを持った墓守のヨモツウサヒコが暗闇の洞窟の奥からやって来る。
でも、おかしいな?
アイツは俺達と一緒に共同墓地がある洞窟内に入り込んでいない筈だ。
オマケに、目の前にいる墓守のヨモツウサヒコは白いフードつきの上着を着ているし、右手に持っているランタンはどこにでもあるような普通のモノである。
「なんか妙だぞ。俺達が洞窟の入り口で出逢った墓守のヨモツウサヒコは、黒いフードつきの上着を着ていて、オマケに南瓜を顔のかたちに刳り貫いたランタンを持っていたはずだし……。」
「じゃあ、まさか、さっき出逢った方のヨモツウサヒコは……。」
「〝あっち〟がメフィストだろうね。アイツは変身が得意技だし……。」
「な、なんとぉー!」
「まったく、このわらわにも見抜けぬとは、なんと抜け目のない奴じゃ!」
「も、戻ろうぜ! まだ洞窟の入り口付近にいるかもしれないし……。」
「そうしたいところだけど、無理っぽいわね。ほら、周りを見なよ、ヤマダ……。」
「う、うおおお、骨兎!? 骨兎に囲まれている!」
「あの野郎、早速、試したな!」
「ど、どういうことだ、大フレイヤ!」
「骨兎はメフィストが不死宝珠を使った証拠なんだ。」
「そ、そうか、共同墓地でアレを使ったから死者が……骨兎と化して蘇ったのか?」
「ビ、ビンゴだ!」
むう、洞窟の入り口のところで出逢った墓守のヨミツウサヒコは、どうやらメフィストって奴が変身した偽物のようだ。
さて、そんなメフィストの奴は、トンでもない置き土産をしていったようだ。
それが俺達を取り囲む動く兎の骸骨……骨兎である!




