外伝EP02 歌姫×歌女神 その14
ハイウェリア城の貴婦人——と、そう呼ばれている物好きな貴婦人の話を聞いたことがある。
ウワサじゃ幽霊が出るという曰くつきの城であったハイウェリア城という古城をたったひとりで改修し、オマケに莫大な財産を使って、トンでもない豪華な城につくり変えたという。
とまあ、それが中フレイヤであると、俺は後日、知ることになる。
ちなみに、彼女が持つ莫大な財産は、歌姫として稼いだモノよりも賭博で稼いだモノの方が圧倒的に多いとか——。
さて、そんな中フレイヤはトラブルメーカーでもあるようだ。
「大フレイヤさん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だ。」
「気のせいですかね? アナタとは何かしらの因縁がありそうです。そういえば、私の子孫かもしれないんでしたね。」
「い、因縁なんてないよ、ワッハッハ! さ、一旦、エフェポスの村に戻ろうぜ。」
中フレイヤは肝心なことを思い出せないようだ。
大フレイヤとの間で何かしらのトラブルがあったようだし……と、大フレイヤが、まるで逃げ出すかのようにエフェポスの村がある方へと駆け出すのだった。
「ま、まあいい、一旦戻るか……。」
「クククク、ボスは絶対に標的を逃がさない! そのことを忘れるなよ! フフフ、きっともう向かっているはずだぜ!」
「そうなの? だけど、ドーンと来いってヤツです……えいっ!」
「ギャ、ギャボッ!」
キルキル団のひとりが、ムクッと立ちあがって、そんな脅し文句を言いながら、飛びかかってくるが、その刹那、中フレイヤの右手の掌が顔面を直撃し、ゴトンと意識を失うのだった。
「掌底です。」
「ま、まあ、見ればわかるが……。」
「か、格闘技もできるのね。」
「はい、この世界へ来てから、少し習いました~☆」
へ、へえ、歌姫であり、賭博師でもあり、そして格闘技も少々って……侮りがたしってところだな。
「うーむ、それはともかく、キルキル団のボスとやらが、ここへやって来るかもしれないな。早いとこエフェポスの村に戻ろう。」
キルキル団のボスとやらが、どんな輩なのか気になるが、今はエフェポスの村に引き返す方が先決だな。




