外伝EP02 歌姫×歌女神 その13
「く、この歌は呪歌……男殺し! おらおら、放しやがれーっ!」
「ぐ、ぐふっ! 頭が……頭が痛くて動けん……に、逃げられた!」
呪歌……男殺し!?
と、大フレイヤは、そう言いながら、自分を拘束していた男の顎に頭突きを食らわせる。
「助けるなら、今のうちだー!」
一旦、青桜との融合合体を解除し、地上に降り立った俺は、すかさず大フレイヤとイシュタルの手足を拘束する荒縄を短刀で切り落とす。
「ふ、ふう、助かったわ、ヤマダ。でも、妙ね。こんなに美しい小鳥の囀りのような歌声が、何故、あの男共には、毒音波となるんだろう?」
「あれは人間の男にのみ効果がある呪歌だ。獣や女には、まったく効果がないというモノだ。」
「そ、そうか、だから〝男殺し〟という名前の歌なのね……。」
歌にも色々あるんだなぁ……。
ふう、なんだかんだと、俺は人間じゃなくて兎獣人で助かったぜ。
仮に人間のままだった場合、キルキル団の柄の悪い男達と同様、頭痛に苦しみ悶えていたことだろう。
「流石は歌女神……アレは、同じ歌姫である俺もまだ会得していないモノなんだ。」
「歌女神ねぇ……。」
呪歌——聞いたモノに何らかの影響を与える歌ってところか?
で、中フレイヤは歌女神という呼ばれるような凄い歌手なのかもしれない。
呪歌男殺しは、大フレイヤも会得していない歌のようだしね。
「ウ、ウガアアッ……も、もうダメだぁ!」
「ブクブクブク……。」
「お、柄の悪い男達がぶっ倒れた!」
キルキル団の連中は、全員再起不能だ!
連中の中には、女はいないようだしね。
「さて、生殺与奪の権利は私達が握りましたよ! そんなワケで語りなさい。私を捕らえに来た理由を!」
「うう、標的がふたりいる……だと!? どういうことだ!」
「そんなことはどうでもいいのです! 私を捕らえに来た目的は、一億MGを取り返すためですか!」
「う、うう、当たり前だ! ボスは血眼になってアンタから一応MGを奪い返そうとしている!」
「ふむ、やはりですか……あ、でも、既に遅いですよ。なんだかんだと、あの一億MGを使い切ってしまいました!」
「ななな、なんだってー!」
そういえば、中フレイヤに何かしらの理由で一億MGを奪われたのがキルキル団の連中だったな。
が、取り返そうと目論む以前に、中フレイヤ曰く、既に使ってしまったとか——。
おいおい、一体、何に使ったんだ、一億MGなんて大金を——。




