外伝EP02 歌姫×歌女神 その9
「あ、あのぉ、アイツは私の母親じゃなくて曾祖母みたいな……ま、まあ、見た目は若いから、そうは思えないけどさぁ。」
「おい、そんなことより、大フレイヤが拉致されたって店主が言っているぞ!」
「はう、なんですってー!」
「おいおい、気づくのが遅いぞ!」
そういえば、大フレイヤは小フレイヤの曾祖母だったか、その姉妹だった気がする。
だが、猛獣界と本体いるべき世界とでは、時間の流れが違うので、本来は九十歳を超えている老婆の筈だが、アイツの容姿は二十代の姿のまま変わらずって感じだったな、
「お、おい、大フレイヤが拉致されたってどういうことだよ!」
「そ、それを私に言われても……。」
「ところで、どんな連中が、あのおっぱい女を……いえいえ、大フレイヤさんを拉致ったんです?」
「え、ええとですね……。」
柄の悪い男達の特徴を一緒について来た中フレイヤが店主に尋ねる。
なんだかんだと、特徴さえわかれば、俺は愛機のゼロ戦こと青桜と融合合体し、空から探せる筈だ。
まだ遠くへ行っていないと思うし!
「はわわわ、きっとキルキル団の連中だと思います! 店主さんの目撃情報の中に、見覚えのある特徴がある男が混じっていましたし!」
「ん、髑髏のかたちをした眼帯で右目を覆っている男のこと?」
「キルキル団⁉ むう、そういうことだけは、忘れずに覚えているんだな……って、何者なんだ、ソイツらは?」
「はい、ソイツらはソドゴラの町のスラム街を根城にしている詐欺師集団です!」
「ぬ、ぬう、そんな連中が何故⁉」
「きっと、私を探しにやって来たんだと思います。この間、奴らから一億MGを巻きあげたので……。」
「な、なんですってー!」
「じゃあ、一億MGを奪い返そうと目論んだキルキル団の連中は、中フレイヤと間違って大フレイヤを……。」
「はい、きっとそうです!」
なるほどねぇ、あの連中――キルキル団とかいう柄の悪い男達の標的は、どうやら中フレイヤっぽいぞ。
で、それが何の因果か大フレイヤを間違えて拉致することになったワケだ。
「そういえば、中フレイヤさんは、私や拉致された大フレイヤに容姿がそっくりな気がします。もしかして、私達のご先祖様だったりして……。」
「はい、可能性は否めないと思います。私は本来いるべき世界では、欧州のフランスという国に住んでいましたが、ある時、大規模な市民革命が起きしまして……。」
「フ、フランス革命!」
「で、そんな革命の真っ只中、夫と2歳になる息子と離れ離れになってしまいまして、気づいたらケモニア大陸西の大国オルゴニアの領内に、私ひとりだけが来てしまいまして……。」
「むう、アンタは人妻で子持ちなのか!」
「は、はい、十五歳の時、結婚しまして、それから三年経った十八歳の時、息子が生まれまして……。」
「じゃあ、私や大フレイヤはフランス革命で離れ離れになった当時二歳の息子の子孫かもしれないわね。」
中フレイヤも俺や大フレイヤ、小フレイヤとは同胞のようだな。
が、俺よりもずっと先輩に当たる人物のようだ。
何せ、十八世紀末のフランスで起きた通称、フランス革命と呼ばれている市民革命に巻き込まれたって、中フレイヤご本人が言っているワケだし……。
で、そんな彼女が本来いるべき世界に残してきた当時二歳の息子の子孫が、大フレイヤと小フレイヤなのかもしれない。
「そ、そんなことよりも大フレイヤを拉致った連中……キルキル団の連中を探さなくちゃ!」
なんだかんだと、大事なことだ、忘れちゃいけない!
早速、獣人飛行隊の隊員達を引き連れて探しに行かなくちゃな!




