外伝EP02 歌姫×歌女神 その8
「まったく! アレは俺が正当な理由でGETしたモノじゃねぇか! それを取り返しにやって来るなんてトンでもない話だぜ!」
と、そんな文句をぶつくさ言いながら、巨乳金髪碧眼美女は、ガーッと勢いよく左手に持ったビールジョッキの中身を喉の奥に流し込む。
巨乳金髪碧眼美女の名前は、フレイヤ――エフェポスの村に住むふたりの〝フレイヤ〟のひとりである。
が、もうひとりと比べると、背が高くスタイルが抜群で、オマケにもうひとりのフレイヤよりも年上なので、通称、〝大フレイヤ〟と呼ばれている女である。
ああ、ついでに有名な歌姫でもある。
俺――ヤマダシロウサヒコは、まだ遭遇したことはないが、死骸が何らかの理由で蘇ったモノである不死者を鎮めるのが得意技だとか。
さてと、それはともかく――。
「フレイヤさん、飲みすぎだぜ。」
「いんだよ、細ぇことは! 俺にとってビールなんざぁ、水のようなモノさ!」
「は、はあ、だけど、これで七杯目ですよ。」
「ハハハハ、まだまだイケるぜ! この程度ならよォォォ~~~!」
大フレイヤがいる場所は、エフェポスの村にある酒場である。
ちなみに、最近、開店したばかりの真新しい酒場である。
「ヒヒヒッ……ま、まだ飲めるぞ! まだまだ……あうっ!」
「ああ、フレイヤさん!」
む、突然、フレイヤが仰向けにぶっ倒れる。
アハハハ……む、無理していたな、コイツ。
「やれやれ、ここにいたのか……。」
「随分と探したが、やっと見つけたぜ!」
「ん、なんだ、アンタ達は!」
「おう、店主、黙ってな! コイツがぶっ放すことになるぜ!」
「ひゃああ、火縄式ですが銃ではありませんかーっ!」
ん、髑髏のかたちをした眼帯が右目を覆っている大男を筆頭とした火縄銃やら短剣をたずさえた柄の悪い男共が、ドドドッと酒場の店内へと雪崩れ込んでくる。
こりゃ、性質の悪い組織に属す連中だな……ん、連中が酔って仰向けに倒れている大フレイヤを取り囲んでいるぞ。
「なあ、この女でいいんだよな、兄貴? ボスの話じゃ金髪らしいが……。」
「うむ、ボスの話ではな。だが、胸の大きさが違うな……。」
「それに年齢もボスの話じゃ二十歳前後らしいが、この女は二十四、五歳だぜ、兄貴。」
「まったく、ボスの情報はいい加減だ。まあいい……四の五の言っていられるかってヤツだ! この女を連れて行くぞ!」
「「へい、兄貴っ!」」
「あ、あああ、フレイヤさん! ひっ!」
「おう、動くんじゃねぇ! さ、行くぞ、テメェら! 裏口からずらかるぞ!」
むう、柄の悪い男達のボスとやらと、大フレイヤは何かしらの因縁があるのか?
それはともかく、柄の悪い男達は、酒場の店主に火縄銃の銃口を向け脅しつつ大フレイヤを拉致する!
おいおい、何者なんだ、コイツらは――ッ!
「うう、フレイヤさんが拉致された! あの人はトラブルメーカーだからなぁ、また何かやらかしたに違いないとは思うが……。」
「へえ、こんなところに酒場が……。」
「うん、ここの店主は美味しい葡萄酒をつくることで有名なのよね。」
「ほう、それは楽しみだぜ。」
「おおお、フレイヤさんの娘さん、イイところに!」
ん、柄の悪い男達に大フレイヤが拉致された直後、俺と小フレイヤが、拉致事件の現場であるエフェポスの村の村外れにある酒場へとやって来るのだった。




