外伝EP01 大空の兎 その41
「おい、ヤマダ、起きろ! 起きないなら、こうしてやる!」
「う、うぷっ! お、重いっ……でも、柔らかいぞ!」
ズドーン――と、重いけど、その一方で柔らかい“何か〟が、俺の顔面を押し潰す。
ううう、なんだよ、一体!
とまあ、そんな謎の重くて柔らかいモノのおかげで俺の意識は、急激に回復する。
「俺は涅槃にはいないようだ……い、生きている⁉」
「ああ、お前は生きているぜ、ヤマダ。」
「う、大フレイヤ……む、では、さっきの重い一方で柔らかいモノは、お前の……。」
「ハハハ、どうだ、気持ち良かっただろう~☆」
「む、むう……。」
両目を開くと、そこにはニタ~と微笑む看護婦の格好をした大フレイヤの姿が……。
う、さっきの重い一方で柔らかいモノの正体は、コイツの無駄にでかい胸のようだ。
嬉しそうだなって? ば、馬鹿、そんなワケがないだろう!
す、素直じゃない……お、俺を馬鹿にすんなぁ!
「ど、どうでもいいが、ここは……。」
「病院よ。昨日、開院したばっかりのね。」
「小フレイヤ……ん、病院だと⁉」
そういえば、消毒液のツンと鼻を刺すにおいが漂っていると思ったら、やっぱりここは病院のようだ。
で、俺は兎獣人用の小さなベッドに寝転んでいる……むう、全身包帯だらけだ。
さて、小フレイヤの話じゃ、俺が今いる病院は、昨日、開院したばかりだとか――。
「ヤマダ、アンタは三日、意識不明だったのよ。」
「ハハハ、だけど、俺の胸で圧迫してやってら即、目覚めやがったぜ!」
「むう、この痴女! なんでそんなことを! ま、まあ、とにかく、意識が戻って良かったわ。」
な、なんだと、俺は三日間も意識不明だったのか……。
「しかし、よく眠っていたよ。レイナに食べられたせいもあるな~。」
「た、食べられた…だと…!」
「ああ、玩具のゼロ戦との融合合体が強制解除になったお前は、竜哭山の火口にまっしぐらって感じで落っこちるところだったんだぜ。それをレイナが口にキャッチしたらしい。でも、誤って飲み込んじまったんだってよ。」
「そ、そうなのか……。」
「でも、運が良かったわね。不味いって彼女が吐き出さなかったら、今頃は……。」
「う、不味い……。」
ま、不味いってなんだよ!
だが、なんだかんだと、俺を助けてくれたレイナには感謝しなくちゃいけないな。
「よっと……。」
「お、もう起きあがっても大丈夫なのか、ヤマダ?」
「ああ、一応な……ちと全身がヒリヒリするがな。」
「ああ、それはレイナの胃液もせいだ。ヤマダ、お前はなんだかんだと、アイツの胃袋ン中に一度、放り込まれたワケだし……。」
「う、ううう……。」
なるほど、さっきから身体のあっちこっちが軽い火傷を負ったかのようにヒリヒリするなぁと思ったら、そういうことか……。
「クンクン……少し胃液臭が残っているな。」
「ああ、お前から酸っぱい臭いがするぜ、ちょっとだけな。」
「そんなことより、ヤマダに面白いモノを見せてあげるわ。ついて来て――。」
「え、面白モノ?」
胃液臭って中々、取れないもんだなぁ……。
と、それはともかく、小フレイヤが俺に面白いモノを見せたがっている。
ふむ、とりあえず、彼女の後について行ってみるか――。




