外伝EP01 大空の兎 その40
『ヤマダ、ショゴスの野郎はどうなったんだ?』
「あ、ああ、大フレイヤか……飛竜達がとどめを刺したよ。だが、本当に死んだかはわからんが……。」
ドラゴンショゴスは竜哭山の火口に底に溜まったマグマの中に落下し、燃え尽きた……のかもれない。
だが、本当に死んだのかもわからん。
あのショゴスとかいう怪物は、恐るべき生命力の持ち主だと聞くし……。
「ふうー、これでやっとエフェポスの村に帰れるな。」
「ウ、ウミコ、ハッカクンから飛竜に乗り換えたのかよ!」
そういえば、今までどこへ? とばかりに、いつの間にかいなくなっていたウミコが飛竜に乗って現れる。
ちなみに、さっきまでウミコをその背に乗せていた使い魔である鶴のハッカクンも飛竜の背に乗っているぞ。
「じゃあ、エフェポスの村に戻るか……う、うお、こんな時にィィィ~~~!」
ドラゴンショゴスは倒したし、エフェポスの村と帰還だ!
そう思った矢先、融合合体が強制解除され、当然、空中にいる俺は、真っ逆さまに竜哭山の火口へ……うわああああー!
「今度こそヤバい! 兎は空を飛べないしな……って、うわああああーっ!」
むう、トンでもない落下速度だ。
重力という名の見えない手が、俺の身体を勢いよく引っ張っているに違いない。
「お、俺は鳥だ! こうやって両手をバタつかせれば、きっと空を飛べる! それにここは幻想世界だ……兎だって飛べる筈だ!」
兎が……兎獣人が空を飛べるワケがない。
それくらい俺にだってわかる。
だが、飛べると信じたいぜ……ここは俺が本来いるべき世界ではないし、オマケに幻想世界だしな。
「イ、イイ夢を見させてもらったぜ!」
脳内麻薬がドバドバと大量に生成されているようだ。
ハハハ、死ぬ前に見るという幻覚ってモノだろうな、きっと……は、花畑だ。
色鮮やかな美しい花々が咲き乱れる花畑、それに背中に純白の翼が生えた兎が、あっちこっちで遊んでいる!
し、しかし、辞世の句は思い浮かばない……。
「――ったく、ヤマダの奴! 今、助けるぞ……あ、食べちゃった~☆」
一瞬、レイナの声は聞こえたと思ったら、次の瞬間、目の前が暗転する……な、何が起きた⁉
た、食べちゃったって聞こえたんですけど……。
「う、ううう、狭いっ……ガクッ!」
お、俺に身に何が起きたんだ⁉
竜哭山の火口の落っこちて煮えたぎるマグマによって溶かされたって感じはしないぞ。
うーん、なんというか狭い場所に閉じ込められた感じだ。
で、そう感じた刹那、俺の意識は涅槃へと旅立つのだった。




