外伝EP01 大空の兎 その24
「わ、私は空を飛んでいるのかー!」
「でも、背中の翼はないぞ?」
「そ、空を飛んでいる⁉」
ん、そんな用心棒のメイヴとアタランテの声が聞こえてくる。
あ、ああ、コイツらも読み取りヘルメットをかぶっていたな。
さて、突然、記憶石が光ったんで思わず目を閉じてしまったから、何がなんだか……よ、よし、瞼を開けてみるか!
「あ、あああ、ホントだぁ!」
ま、両目の瞼を開けた途端、俺の目の前に信じられない光景が……む、むう、メイヴやアタランテの言う通りだ!
お、俺は空を飛んでいる!
「わあああ、翼がないのに、空を飛んでいるなんて……え、落っこちないのは何故?」
「私達は今は無き竜騎士団の記録……過去の映像を見ているワケだしね。」
「な、なん~だ、そういうことか……。」
ふ、ふう、道理で落っこちないワケだ。
「お、おい、何か来たッ……飛竜だ! 人間が乗った飛竜だ!」
「ハハハ、アレは在りし日の竜騎士団の姿だ。」
「そ、そうなのか……。」
「少し様子を見ていよう。彼らが何故、現在に存在しないのかわかるかもしれないしな。」
わお、飛竜に乗った在りし日の竜騎士団の連中が、大空を縦横無尽に飛び交う姿が、俺の双眸に映り込む。
ハ、ハハハ、記録石の残る過去の映像とはいえ、壮大な航空絵巻とやらを見ているかのようだ。
「おっと、映像が変わったぞ! 今度は夜の……ん、なんだ、アレは⁉」
「ついでに、何かが燃えているぞ⁉ 闇の中で赤々と……城か?」
「おお、アレは懐かしの竜哭山の聖竜城ではないかー!」
「竜哭山⁉ 野良飛竜が巣食っている場所か?」
「うむ、わしと違って危険連中でなぁ……と、そんなことはともかく、燃えているのは竜騎士団にアジトであった聖竜城じゃないか!」
お、おおお、ズギュウウン――と、風景が変わる!
今度は真っ暗闇の夜だ。
で、どうやら竜哭山にいるようだが、何かが燃えている……レイナ曰く、竜哭山にかつてあったという竜騎士団の本拠地こと聖竜城のようだぞ。
「おいおい、何があったんだぁ?」
「レイナ、何か覚えていないか?」
「ん、忘れるも、あの日、私が駆けつけた時にはすでに……。」
「な、なんだぁ、現場にいなかったのかよ!」
「ムムムッ……だ、だけど、これでわかる! 聖竜城が焼け落ちた理由が!」
「あ、ああ、それは確かになぁ……。」
俺達は、どれくらい昔の光景を見ているんだろう?
さて、それを紐解くきっかけとなりそうな過去の映像が、俺達の目の前で展開中である。
竜哭山を活動拠点にしていた竜騎士団が本拠地としていた聖竜城が、何者かの手による人為的な行為? または超常現象?
とにかく、俺は……俺達は轟々と燃え盛る真紅の火炎によって炎上する聖竜城の様子を目撃している!
「わしはもう我慢できん!」
「レイナ、待つんだ! お、おお、そういえば、空を飛べるんだったな! うおー!」
俺達はすでに過ぎ去った過去の映像を見ているんだ。
それに、ここだと夢の世界……玩具のゼロ戦と融合合体した時のように空を自由自在に飛べるはずだ!
と、そんなワケで俺は、先行したレイナに続けとばかりに、轟々と炎上する竜騎士団の本拠地――聖竜城へと空を飛行するかたちで向かうのだった。




