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俺、異世界で魔女になります!  作者: はすた
外伝シリーズ
213/836

外伝EP01 大空の兎 その21

 な、なんだが場違いな奴が現れたぞ……何者だ、一体⁉


 その前に、バルロスの塔の壁面を破壊し、生じた穴から内部に入ってくるとか、行動そのモノが場違いだ。


「な、何者だ、お前!」


「忘れた? さっき兎ちゃん達を空中で追い回していたじゃん。」


「ゲ、ゲェー! まさか……まさかァァァ~~~!」


「その出で立ちは伝説の飛竜王女(ワイバーンプリンセス)⁉」


「へ、飛竜王女⁉」


「うむ、バルロスの塔に住んでいるという伝説の飛竜じゃ! うお、では、さっきの蛇型飛竜は……。」


「うん、アレは確かにわしだ。それはともかく、全部、見ていたぞ。まったく、なんてモノをここに招き入れたんだ。」


「「「な、なんだってー!」」」


「まあいい、さっさと下の階へ降りるぞ。詳しい話は後だ――ッ!」


 な、なんだって⁉ あ、あの蛇型飛竜だと、それにコイツがバルロスの塔に住んでいるという伝説の飛竜――飛竜王女だという。


 本当かよ……だが、今はバルロスの塔の最下層へ逃げなくちゃいけないな。


「まったく、駆け降りる速度が遅すぎる。このままで追いつかれてしまうな……ならば!」


「か、壁に穴を⁉」


 ショゴスは執念深い。


 むう、ショゴスは侮れない存在だ。


 瓦礫の下敷きになったが、その身を粘度のない液体に変え、ジュルジュルと瓦礫の下から染み出すかたちで呆気なく脱出すると、再び俺達を追いかけてくるのだった!


 と、そんなショゴスから逃げ切るための方法を思いついたのか飛竜王女は、鉄拳で階段の壁を再び破壊すると――。


「空を飛んで逃げるぞ。わしの身体にしがみつくんだ!」


「え、しがみつけって⁉ お、おう、わかった!」


「ひゃああ、落とさないでね……って、キャアアアアッ!」


 白いワンピースと麦わら帽子という格好の人間の少女の姿から、真の姿である蛇型飛竜の姿に戻る飛竜王女の巨大で長い真っ黒な鱗に覆われた身体に俺はしがみつく。


 無論、ウミコとウクヨミ、それにイシュタルとパピルザも――は、はわわわっ! 俺達がその身にしがみついたのを確認した飛竜王女は、先ほど鉄拳を叩き込みぶち壊した階段の穴の外……蒼穹へと飛び出す。


「ハハハ、ざまぁみろ! これで無事に脱出できましたね、ウミコ様。」


「あ、ああ、だが、奴が追いかけてくる可能性もある。故に、今はまだ油断することできない状況下にいることに代わりはない!」


 確かにな、今はまだ油断は禁物という状況下にいることに変わりはない。


 あのショゴスとかいう名状しがたき怪物は、決して侮ってはいけない存在だしね。


[飛竜王女、ここから東へ向かってくれ! エフェポスの村の中にある兎竜の祭壇へレッツゴーじゃ!」


「兎竜の祭壇に、竜操石を捧げれば、魔術師ギムル……いや、ショゴスに操られた飛竜共を正気に戻すことができるかもしれないのだ。」


「あ、ああ、そういうことなのかぁ……ん、待てよ。同じ飛竜なのに、飛竜王女をアイツに操られていないなんて奇跡じゃないか?」


「そういえば、他の飛竜達の様子が最近、妙だなぁとおもっていたところだ。しかし、奇跡か、嬉しいことを言ってくれるモノよ。ま、わしのような古老竜(エルダードラゴン)を操るなんぞ百万年早いってワケよ! ああ、そうだ。わしのことは飛竜王女ではなくレイナと呼ぶが良い。」


「は、はあ……。」


 空を引き裂くような猛スピードで飛行する飛竜王女――レイナは、一路、エフェポスの村へと向かう。


 目指すは魔術師ギムルを名乗っていたショゴスに操られた飛竜共を正気に戻すことができるかもしれない竜操石を使う場所、兎竜の祭壇へ――。

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