外伝EP01 大空の兎 その14
「そういえば、お前達はどこから、このバルロス塔の先端……竜騎士団の墓場へ入り込んだんだ?」
「え、そりゃ、無論、空を飛んで……。」
「空を飛んで!? むう、そんな方法もあったか!」
「ちなみに、私とイシュタル女史は、人跡未踏の場所が多いディアナスの森の中をかき分けながら、わざわざと……。」
なんだかんだと、バルロスの塔の中には、地上からも入り込むことができるようだ。
で、俺達が今いるそんなバルロスの塔の先端こと岩のチューリップは、ガスマスクを趣味で被っている奇人である自称、科学者であり、考古学者でもあるイシュタルの話では、竜騎士団の墓場だとか……な、なるほど!
だから鎧を身につけた戦士の骸骨……竜騎士達の遺骸が、あっちこっちに鎮座する台座が見つけられるワケだ。
「お、また広場か……あ、でも、ここには骸骨が鎮座する台座がないね。」
「ああ、もうあんな気味の悪い骸骨を見たくなかったしなぁ……。」
「ん、それより飛竜の像っぽいモノが⁉」
「お、コイツが竜操石じゃ! よし、回収しておこう。」
「そんな石コロよりも、その飛竜の像の頭を見てみなよ。青い石が額のところに埋め込まれているだろう?」
さて、大きさは大体、三メートルくらいだろうか?
ウクヨミが持ち込んだ赤々と燃え盛る火炎が灯る松明が、額に青い星型の石が埋め込まれている飛竜像を照らし出す。
「私達はアレを探しに来たってワケ。竜騎士団の活動の歴史などが記された記憶石を!」
「竜騎士団の活動の歴史などが記された記憶石⁉」
「うん、今は無き竜騎士団の全貌を知るために必要不可欠なモノよ。」
「そういえば、科学者であり考古学者だって言っていたもんな。」
「だが、ひとつ問題があるのよ。」
竜騎士団の活動記録等の歴史が記録されている石なのか、アレは……。
で、それを入手するのが科学者であり、考古学であるイシュタルとパピルザの目的のようだ。
だが、何かしらの問題が発生しているようだぞ。
「も、問題⁉」
「記憶石が飛竜の像の額から、どうしても取ることができないのよ! ほら、見てよ。片手で引っ張っても、すぐにでも取れそうでしょう?」
「どれどれ、飛竜の像に登って確認するか……あ、ホントじゃ! わらわ達、兎獣人の力では手間がかかりそうじゃが、人間の力なら、すぐに取れそうじゃのう。」
「だが、それが無理だから強引に飛竜の像から記憶石を取る手伝いをしてほしいってワケ!」
「な、なるほど~~~! 故に、わらわ達に協力を……。」
「ん、どうでもいいけど、この像に向かって何かしらの呪文を唱えなくちゃ、あの石を外せないみたいだ。ほら、この台座にそう書いてある。」
「むう、お前、竜語が読めるのかー!」
「あ、ああ、一応……『我が前で秘密の呪文を唱えよ、竜騎士!』って書いてあるぜ。」
飛竜の像の足許には、額にはめ込まれている記憶石を取り外すためには、何かしらの呪文が必要だと竜語が刻まれている。
で、何故か俺は読める、竜語ってヤツを――。




