外伝EP01 大空の兎 その12
俺が本来いるべき世界においては、太古の昔に滅び去った巨大爬虫類である恐竜などの古代生物が、この世界――猛獣界のケモニア大陸では、今でもごくごく普通に息づいているようだ。
が、その中には、神話の中の生き物――例えば、ドラゴンなんかも生息しているワケで……。
「くそ、しつこいな! 俺達を逃すかって言っていやがる!」
「んんん、ヤマダ、お前、竜語がわかるのか?」
「竜語? よくわからんが、あの蛇型飛竜の声が聞こえたんだ。」
むう、玩具のゼロ戦と融合合体し、ウミコとウクヨミという二羽の兎獣人を乗せた状態で大空を飛行中の俺は、前述したドラゴンの一種である蛇型飛竜に追いかけられている!
「よ、よし、上手く入り込めたぞ! う、うおおおっ!」
「融合合体が解けてしまったようだな。」
「だが、心配無用だ。再び乗れば融合合体できるらしいぞ。」
「へ、へえ、そうなのか……と、とりあえず、飛竜から逃れることはできたな。」
さて、俺達はバルロスの塔の先端――岩のチューリップに見受けれる穴の中に飛び込むと同時に、融合合体が解けてしまう。
だが、上手く蛇型飛竜から逃れることができたぞ。
だけど、あくまで一時だろう。
バルロスの塔から出た途端、奴が再び襲ってくる可能性があるし……油断ならぬ存在だ!
「さて、松明を事前に用意してありますぞ、ウミコ様。」
「おお、用意がいいのう、ウクヨミ。」
「うわあ、骸骨! 鎧を身につけた骸骨がたくさん!」
「ヒイッ……君が悪いのう。」
「まったくです。わああ、下手に触らない方でいいですね……ど、髑髏が落っこちきましたァァァ~~~!」
今、俺達はバルロスの塔の先端である岩のチューリップの中にいる。
で、ウクヨミが用意した松明の灯りで周囲を照らしてみると、目立ったモノが見受けられない殺風景な広場という感じの場合に、俺達はいるようだ。
が、そう思ったのも束の間である!
一見すると殺風景な広場であるが、ウクヨミが用意した松明の燃え盛る火炎が、異様なモノを照らし出す。
広場のあっちこっちに祀られている鎧を身につけた戦士の骸骨が鎮座する台座を――。
「ここって墓場か!? お、通路があるぜ。ここは薄気味が悪いから、さっさと進もう!」
と、そんな殺風景な広場には通路が見受けられる……よし、こんな薄気味の悪い場所に一秒たりとも留まる気はないし、松明の灯りで照らしながら、進んでみるとしよう。
「ん、何者かの気配を感じるぞ!」
「ウ、ウミコ様! まさか飛竜ですか? 確かに小型種もいるみたいですが……。」
「むう、この気配は奴らのモノじゃない。恐らくは人間のモノじゃ。」
「に、人間が、この先にいるのか!?」
黒い兎獣人であるウミコの真っ黒で長い左右の耳が、円を描くように動いている。
この先にいるモノの気配を感じ取ったようだ。
で、どうやら、そんなウミコの話では、今、俺達がいる通路の先に〝人間〟がいるようだ。
「もしかして、野生の飛竜を操っている魔術師か!?」
「可能性は否めないのう。だが、その場合は、このわらわが成敗してくれる!」
「ならば我らの兎魔術の見せどころですね!」
「や、やる気なのか! むう、俺も覚悟しなくちゃな!」
そういえば、飛竜を操っているかもしれない魔術師がいるかもしれないんだったな。
仮に、この先にいるモノが、その魔術師だった場合、たたかわざるを得ないのかも……覚悟しなくちゃな、俺!




