外伝EP01 大空の兎 その10
俺の名前は、ヤマダシロウサヒコ……ま、仮名なんだけどね。
ちっとも思い出せない真名を思い出すまで、この名前を使っておくか……。
と、そんな俺の今の姿は、多少、形状が変化してしまったが、玩具のゼロ戦である。
融合合体という状態というワケで――。
え、多少とはいえ、どんな形状変化が起きたのか教えろって?
むう、そうだなぁ、プロペラが兎の耳のような形状になったくらいだろうか?
「空を飛ぶのって最高じゃのう。」
「そうですか? 私はむしろ怖いですよ……ガクガクブルブル!」
「どうでもいいけど、俺はいつまでゼロ戦と一体化していなくちゃいけないんだよ!」
「そうじゃのう。とりあえず、バルロスの塔へ到着するまでかのう……。」
「むう、いい加減だなぁ、まったく……。」
さてと、俺――ヤマダシロウサヒコと融合合体し、一体化したゼロ戦の玩具は、エフェポスの村の古老こと祈祷師のウミコと助手であるウクヨミを乗せた状態でバルロスの塔を目指し、一路、空中を飛行中である。
「まさか、こんなかたちで再び空を飛びことになるとはな……。」
意外だかたちで再び俺は空を飛ぶこととなったワケだが、まさか俺自身が玩具とはいえ、ゼロ戦になってしまうとはなぁ……。
「ん、森の中に古い家がたくさんあるな。ひょっとして誰か住んでいるのか?」
ディアナスの森とやらだけど、鬱蒼とした背の高い木々のあっちこっちから大きな古い家の屋根が数多、見受けられる場所だ。
「アレは今では落ち目な宗教団体になってしまったが、かつては兎天原を含めたケモニア大陸の全土で信仰されていた一神教のラーティアナ教の宗教施設の廃墟じゃ。」
「へえ、一神教ねぇ。この世界にも当然、宗教が存在するみたいだな。」
この世界にも宗教が存在するのか……ま、当然だよな。
で、ディアナスの森の中には、そんな宗教のひとつラーティアナ教の教団施設として機能していたが、今現在は廃墟となってしまっている建物がたくさんあるワケだ。
「どうでもいいが、バルロスの塔が見えてきたぞ!」
「ん、アレがそうなのか⁉ 俺には巨大な岩のチューリップに見えるんだが……。」
お、バルロスの塔とやらが見えてきたぞ。
が、それは巨大な岩のチューリップにしか見えないモノなんだが……。
「伝説では、どこかに着陸できる場所があるようじゃぞ。」
「そ、そんなことより、厄介なモノがやって来ましたよ、ウミコ様!」
「わ、黒い飛行物体が……そ、空飛ぶ角の生えた爬虫類……恐竜⁉」
「恐竜? アレは飛竜だァァァ~~~!」
古代生物の想像図なら、何度か見たことがある。
アレは……古代の超古代に存在した大型爬虫類である恐竜の一種では⁉
だけど、姿が異なる気がする。
ソイツは螺旋を描く二本の角が生えた鰐や蜥蜴といった爬虫類に類似した頭部を持つ一方で、胴体は蝙蝠のような翼と鋭い鉤爪の生えた指が三本左右対称とばりに見受けられる脚と長い身体を持つ蛇という異形なワケで……。
まさか、コイツが飛竜⁉




