外伝EP01 大空の兎 その9
「わ、なんだ! 周りが歪んで見える……アーッ!」
玩具のゼロ戦の操縦席に乗り込んだ途端である。
ギュルンと目の前の空間が、螺旋状の歪み始める。
そして全身が千切れるような激痛がァァァ~~~!
「ふ、ふう、痛みも引いたし、オマケに歪んで見えな……え、俺は玩具だけどゼロ戦に乗っているんだよな? それなのに何故、うつ伏せに寝転んでいるんだ?」
う、周囲が歪んじゃいないし、引き千切れるような全身の痛みもないし……まったく、アレは一体⁉
でも、妙だ。
俺は間違いなく玩具のゼロ戦の操縦席にいたはずなのに、それが何故かうつ伏せに倒れているワケだ。
「ヤマダはまだ気づいていないようだぞ。」
「うん、そうみたいね。でも、上手く成功したみたいね。」
「おい、どういうことだよ! 説明しろ!」
「お前は、その玩具のゼロ戦と融合合体したんだ。」
「な、なんだってー! 俺は玩具のゼロ戦と融合してしまったのか! む、むう、面白いことって、こういうことだったのか!」
乗れば面白いことが起きるって小フレイヤが言っていたけど、こういうことだったのか!
く、なんてことを……なんて魔術を施しやがったんだ!
「フフフ、上手くいったみたいじゃのう。これでバルロスの塔へと飛んで行けるかのう。」
「はい、これで〝あの塔〟の封印を解くことができますなぁ、ウミコ様。」
「う、お前達、いつの間に!」
俺が融合合体した玩具のゼロ戦は、確か小さな兎獣人なら二羽、乗ることができた筈だ……む、むう、ウミコとウクヨミが、いつの間にか搭乗しており、オマケにゴーグルのついたヘルメットを被っている。
おいおい、お前達も来るのかよ……って、バルロスの塔とやらは、一体、どこにあるのやら?
なんだかんだと、行くに当たって、それを訊いていなかったな。
「そのバルロスの塔とやらは、どこにあるんだ? で、そこにさっき言っていた竜操石があるとか?」
「うむ、その通りじゃ。ちなみに、あそこには廃業する前に竜騎士達が竜操石を隠していったという伝説があるのじゃ。」
「故に、ウミコ様をアレを得ようと思い立ったのだ。最近、多発している飛竜による障害事件を鎮めるために――。」
「そ、そうなのかぁ……って、本当について来る気?」
「無論! ん、お前はハニエルやヤス、それか大小フレイヤ……名づけてフレイヤズの方は良いと言いたいのか?」
「む、むうう、俺はそこまでは……。」
なんだかんだと、ウミコはバルロスの塔とやらに行く気満々な様子だなぁ……。
俺はこの村の住人じゃないし、多発する飛竜による被害を終息させる手伝いをする道理はないので、やっぱり行かない……と、言いたいところだけど、なんだかんだと、もう手遅れだな。
「仕方がない……行こう、バルロスの塔へ!」




