外伝EP01 大空の兎 その8
「竜操石を得るのじゃ!」
「ウ、ウミコ様!」
ん、禍々しい邪神像に見えなくもない像が置いてある祭壇に向かって必死に祈祷を行っていたウミコが、クルンと踵を返し、そう言い放つのだった。
ひょっとして神のお告げがあった、とか?
「竜操石?」
「竜騎士団が飛竜に騎乗する際に使っていた魔法の石だ。私の記憶では、ソレを使って飛竜を操ったとか――。」
「へ、へえ、そうなんだ。じゃあ、それがあれば野生化し狂暴化した飛竜を追い払えるのかもしれないのかな?」
「うむ、ハスタ様はそうお告げになった。」
「ハスタ様? あ、ああ、その禍々しい像のこと?」
「禍々しいとは失礼極まりない物言いじゃぞ、シロウサヒコ!」
「ウミコ様、ソイツはヤマダサブローです。」
「俺はヤマダでもシロウサヒコでもないっ! 何度、言えば……も、もういい、もういいよ! 名前だけはどうしても思い出せないし、ヤマダでもシロウサヒコでも自由に呼べばいいさ!」
俺は少し自棄を起こしたかも……。
名前だけが何故か思い出せないしねぇ……。
「ふむ、じゃあ、ヤマダシロウサヒコと命名しよう。」
「う、うむ、それでいいよ、それで……ってか、アンタなら、俺の真名がわかると思ったんだけどなぁ……。」
「お前、真名を知りたくて、ここへやって来たようじゃのう。だが、無駄足になってしまったかのう。童も神通力をもってしても、わからないこともある……ま、そんなところだ。」
むう、俺の真名はウミコの神通力をもってしてもわからんのか……。
「さて、ヤマダシロウサヒコよ。お前は飛行機乗りとやらのようじゃな。そこでちとわらわの頼みを聞いてくれんかのう。」
「頼み……だと⁉」
「ああ、そんな飛行機乗りのお前だからこそ使えるモノを用意してある。そして持ってきてほしいのじゃ……竜操石を!」
「うおー! それはゼロ戦!」
「ラジコン飛行機のゼロ戦……玩具だよ。小さな兎獣人なら二羽乗れるぞ。」
「だけど、魔術で動くように改造してあるわ。」
ラジコン飛行機……玩具だけど、魔術で動くように改造してあるゼロ戦だと⁉
とにかく、小フレイヤがそんなゼロ戦の玩具を持ってくる。
むう、ウミコはどこかに保管されている竜操石を俺に取りに行かせる気なのか、玩具のゼロ戦で――。
「あ、そうそう、このゼロ戦の玩具だけど、〝乗れば面白いこと〟が起きると思うわよ。」
「お、面白いこと⁉」
「フフフ、乗ってみればわかるわ~☆」
乗れば面白いことが起きるねぇ……。
じゃあ、乗ってみればわかるか!
そんなワケで、俺は早速、玩具のゼロ戦の操縦席に飛び乗るのだった。




