EP0 俺、蘇る。その2
ここは王家の墓という場所らしい。
そんなワケで松明の灯りで周囲を照らすと、仮に外へ持ち出し、売っぱらえば一夜にして億万長者になれそうな豪華な副葬品っぽいモノが、あっちこっちに……。
「む、誰かいるのか!」
「兄貴、警備兵っすよ!」
「なんだと、ヤス! こうしちゃいられん!」
「おい、待てよ! な、なんで俺……女のコになってるワケ?」
むう、さっきから奇妙な感覚だ。
む、胸が妙に重いんだ……そ、それにすごく柔らかい!
こ、これはまさか…おっぱい!?
それに股間の大事なモノがなくなっているんだァァァ~~~!
「し、知るかそんなこと! お、俺は早く逃げたいんだ! その手を離せェェ~~!」
「待て待て、私は警備兵ではない。と、そんな私の名前はブックス……君達の足許にいる。」
「え、俺達の足許!?」
「うおお、顔のある本だァァ~~!」
わお、俺の足許に視線を向けると、そこには表紙にダンディーなヒゲの生やしたオッサンの顔がついている不気味な本が置いてある!
な、なんだ、コイツ……むう、兎に続いて本まで喋りやがったぞ!
「ふむ、どうやら君はエリス姫であってエリス姫ではないようだね。私の知っているエリス姫は十五歳の少女だったが、君は一回り年上の大人の女性のようだね」
「むう、実年齢より少し若いな。」
「え、実年齢より少し若い?」
「ああ、なんでもない。こっちの話だ。」
お、俺は二十五歳の女の姿をしているって!?
むう、やっぱり俺は女になってしまったようだ。
「ん、足音が聞こえるっす!」
「わああ、今度はホントに警備兵が、ここへやって来るようだな!」
「け、警備兵!?」
「ヤス、持てるモノだけ持ってとんずらだ!」
「兄貴、了解っす! ここで警備兵と遭遇したら、俺達は指名手配犯になってしまうっすからね!」
コツコツコツと確かに足音が聞こえる。
本物の警備兵キターってところか?
さてさて、なんだかんだと、ここは墓場のようだ。
んで、そんな墓場を荒らす罰当たりな連中から被葬者と一緒に埋葬されたお宝を守護する警備兵といった感じの者達がいても当然だよな。
「あ、お前ら、どこへ! わ、床に穴が……。」
兄貴、それにヤスという名前の二足歩行&喋る兎は、床に見受けられる穴の中に飛び込むのだった。
「よし、私達も床の穴へ飛び込むぞ!」
「あ、ああ! あの兎ちゃんが松明を持って行ってしまったし、真っ暗闇な場所にいるのは、もう懲り懲りだ!」
「それなら大丈夫だ。私が照明となろう。」
「わ、眼が光ってる! ちょっとキモいかも……。」
俺は足許にある喋る本ブックスを拾い上げると、兄貴とヤスが飛び込んだ穴の中に駆け込むのだった。
「お、けっこう広い穴だな。これなら俺でも!」
喋る本ことブックスの表紙に見受けられる顔ことダンディーなヒゲのオッサンの眼が光を放つ……お、穴はけっこう広いぞ。
それに兄貴とヤスは梯子を持って行くのを忘れている……ラッキー!
「おい、エリス姫の霊廟内から声が聞こえるぞ!」
「まさか墓泥棒が侵入したのかも……よし、入るぞ!」
うわ、警備兵がここへやって来るのも時間の問題だな!
俺も早いとことんずらしなくちゃ!