外伝EP01 大空の兎 その7
「ありていに言おう。件の飛竜とは、文字通りの空を飛ぶドラゴンだ。」
「も、文字通りの存在みたいだな。で、ソイツはどこから来るんだ?」
「この村の北北東にある竜哭山という山だよ。今は存在しない竜騎士団の本拠地があった山さ。」
件の空竜とは、文字通りの空を飛ぶドラゴンのようだ。
ん、ドラゴン?
西洋の神話に出てくる火を吐く巨大な爬虫類のような怪物だったかな?
ドラゴンといえば、西洋では聖ゲオルギウスやジークフリートといった英雄に邪竜として退治される話があったな。
その一方で日本を含めた東洋では、ドラゴンは聖獣や神獣扱いだったかな?
その前に同じドラゴンでも西洋と東洋では、姿そのモノが違う気がする。
「竜騎士団?」
「さっき私が言った竜哭山を本拠地にしていた飛竜を乗騎として活動していた連中のことさ。」
「ソイツらが何年か前に廃業しちゃったんすよ。」
「んで、廃業したのはいいが、飼育していた飛竜をそのまんまにしていったとか、野に放ったとか……。」
「ま、真相はどうあれ連中が飼育していた飛竜が野生化したってワケさ。んで、そんな野生化した飛竜が、時々、人里に降りてきて悪さを……てか、最近、多いんだよなぁ、飛竜による被害がさぁ!」
野生化した飛竜ねぇ……。
じゃあ、あの瀕死の重傷を負ったあの男は、そんな野生化した飛竜に襲われたってところだろう。
「男が意識を取り戻しました!」
「何っ……君、飛竜に襲われた場所を教えてくれ! すぐに討伐隊を派遣し、駆除を行おう思っている!」
「ギ、ギギギッ……お、俺は王立魔術アカ……デミーの……キ……お、おごごごっ!」
「お、おい! わあ、身体が凍り始めた…ど、どういうこと⁉」
「く、飛竜だけじゃない……魔術師も関わっているぞ、こりゃ!」
兎獣人の看護婦に手当てを受けていた男が意識を取り戻す――が、その直後、男の身体が、バキバキという音を奏でながら、凍り始める!
い、一体、俺の目の前で何が起きているんだ⁉
「魔術師って所謂、手品師のことか? 火を使った芸とかを披露する?」
「手品師のような茶地な存在じゃないと言っておこう。」
「ウクヨミの言う通りさ、ヤマダ。“この世界〟の魔術師は本物の火を自由自在に操ったり、オマケに身体が腐る呪いだってかけることができるモノもいるんだぜ。」
「ほ、本当のことなのか……。」
「ふむ、だが、あの男を見てわかった。野生化した飛竜が頻繁に人里に現れるようになった理由が――。」
「私もなんとなく! つーか、飛竜はドラゴン族の中じゃ、懐きやすい種で気性も大人しい方だって聞くしね。」
「そうなんだ……むう、ひょっとして、その魔術師ってヤツが飛竜を操っているとか?」
「あり得ない話ではない。魔術師の中には、魔獣の類を使役するモノもいるらしいからな。」
一連の飛竜が関わる事件の裏には、魔術師が関係している⁉
むう、とにかく、そんな魔術師が竜哭山に巣食う飛竜を……操っているのかもしれない!




