外伝EP01 大空の兎 その3
「やっと気づいたって感じね。」
「コイツは鈍いなぁ、すぐに気づけよって感じだぜ。」
「おいっ……俺の身体に何をした! 右手も真っ白な毛に覆われているぞ……おわあ、両足もだぁ!」
「俺達は何もしちゃいないよ。」
「これはあくまで想像だけど、この世界へ次元転移した際に変身しちゃったんじゃないの……兎ちゃんに?」
うおおお、右手まで真っ白な毛に覆われているなんて……く、一体、俺の身体に何が⁉
「の、呪いだ! 俺に呪いをかけたな! ここは異世界なんだろう? だったらできるんだろう? 俺を呪いで獣に変えるなんてことを……。」
呪いだ! きっと、大フレイヤか小フレイヤが、俺に呪いをかけたんだ!
ここは異世界なら、呪いの力で対象物を獣に変えるとか絶対にあり得る話だ……だけど、俺は夢を見ている可能性もあるんだ。
うん、そうに違いない、絶対にそうだ……。
「お、美味そうな兎ちゃんじゃないか~☆」
「あ、ラミアさん。」
「へ、蛇女ぁ!」
ん、不意に背後を振り返ると、そこのは上半身は麦わら帽子をかぶった白いワンピースという格好の少女が見受けられる……が、下半身が獰猛なとぐろを巻いた大蛇だ!
コ、コイツ……どこかの国の神話の中に出てくる半人半蛇の怪物のようだ!
「彼女はラミアさん。この間、オリン山ってところへ行った時に知り合ったお友達よ。」
「つーか、キョウ姐さんが気に入ったからついて来たんだっけ?」
「まあ、そんな感じかな~? さて、そろそろエフェポスの村へ戻らない? 飛竜はいないようだし……。」
「ん、飛竜?」
「ああ、ここら辺にも“出る〟ようになって困っているんだ。」
「聖地アンザスの外に出てきてビックリしたわ、マジで! まさか野良飛竜なんてモノがいるなんてことに――。」
蛇女の名前はラミア。
キョウって人物が気に入ってしまい一緒について来たって感じらしい。
さて、飛竜ってなんだろう……。
日本の神話には出てこない類の……欧米圏の怪物のことだろうか⁉
と、それはともかく、俺が今いる背の高い雑草が生い茂る草原の近くには、エフェポスという村があるようだ。
うーん、名前の響きから、やっぱり、ここは外国のようだ……ん、異世界だっけ?
とりあえず、大フレイヤと小フレイヤ、それに蛇女ことラミアの後について行ってみよう。
そこへ行けば、俺の両手が真っ白な毛に覆われている理由などなど、すべての謎が解けるのかもしれない。




