外伝EP01 大空の兎 その2
気のせいか……ああ、きっと、気のせいだ。
目の前にいるふたりの女が、何故か大きく見えるだなんて、眼の錯覚として……。
「それにしても、こんなところで何をしていたんだ、お前?」
「それは俺も知りたいところだ。気づけば、ここの寝転がっていたワケだし……。」
「ふむ、知らぬ間に、ここにいたってワケね? なるほどぉ……。」
なるほど……じゃないだろう!
く、ともかく、このふたりの女は、とりあえず、“敵〟ではようだが……油断は禁物だ。
敵軍関係者であることを隠して近づいてきた可能性も否めないことだし……。
「あ、名乗っていなかったわね、兎ちゃん。私はフレイヤ、こう見ても日本の学校に通う女子高生なんだから!」
「おい、それは過去の話だろう? “戻る手立て〟がないワケだし……あ、ああ、俺の名前はフレイヤだ。」
「同じ名前?」
「アハハ、ややこしいでしょう? それじゃ、私のことを小フレイヤとでも呼ぶといいわ。」
「じゃあ、俺は大フレイヤでいいよ。面倒くせぇし……。」
「そ、その前のお前達は何者なんだ!」
「ん、私達? そうね、最近、知ったことだけど、私とこの巨乳女は、どうやら私の先祖みたいなのよね。」
「アハハハ、先祖とはいえ、コイツの曾祖母の姉に当たるワケだし、そう遠くない血筋ってヤツだな。」
「な、なん……だと⁉ ならば、何故、容姿が若いんだ……ふ、普通なら考えられない話だろう!」
むう、話を聞いている限りじゃありえない話だろう!
どう見ても二十代前半の若々しく美しい容姿の背の高い巨乳女こと大フレイヤは、小柄で眼鏡をかけた女――小フレイヤの曾祖母の姉だなんて!
「まあ、信じられなくても当然だよね。」
「ああ、みんな最初はそうさ。俺だって、ここに来るまでは夢を見ているんだと思っていたしな。」
「何せ、ここは異世界なんだもの……。」
「そうそう、異世界ってヤツさ! だから、俺は若い姿のままでいられるんだ。あ、そういえば、お前らジャップがハワイの真珠湾を攻撃しただろう? 俺は丁度、歌姫として慰問のためやって来ていて被害に遭ってさぁ、気づいたら、この世界の来ていたんだ。」
「…………。」
ううう、混乱しそうだ。
ここが異世界だなんて信じられるかよ!
だが、大フレイヤの言っていたことは、確かだ。
「く、その話をするってことは、やっぱり!」
日本軍が、ハワイ諸島のオワフ島にあるアメリカ軍の軍港である真珠湾を襲撃した話を口にした大フレイヤの話を聞いていると、やっぱり、コイツらは……。
「お前らは俺を捕まえにやって来たんだな!」
そう言い放つ俺は、素早く左側の腰にぶらさげているホルスターを開け、左手で愛用の南部十四年式拳銃を取り出すと、その銃口を大フレイヤと小フレイヤに向けるのだった。
「わお、レトロな拳銃!」
「それって本物か?」
「当たり前だ!」
「本物なのぉ! アハハ、そんなことより、その拳銃を握っている左手を見てみろよ。」
「な、なんだと! う、うああああっ……ま、真っ白な毛に覆われている! こ、これはまるで……。」
な、なんだと、愛用の南部十四年式拳銃を握る左手が白い毛に覆われている!
ま、まるで獣のような手だ! お、俺の身体は一体!




