外伝EP01 大空の兎
しばらく外伝を書きたいと思います。
EP01は本来は戦場に散ったはずの名もなき特攻隊員が、次元を超えてケモニア大陸にやって来る物語です。
「うああああっ……熱いっ!」
そう口走った刹那、俺の身体は爆炎の奔流に飲み込まれ瞬時に炭屑と化し、砕け散る。
それが最後に見た光景ってヤツだ。
で、死んで肉体を失った気薄な亡霊となった後でも、あの時の光景を覚えているモノなんだと、俺は実感するのだった。
さて、俺の名前は……ム、ムムム、名前を思い出せないぞ!
だが、これだけは覚えている。
俺は大日本帝国海軍所属の軍人で、オマケの飛行機乗りだったことだけは――。
そして、大体、一年半ほどの付き合いになるが、いくつもの戦場を共に駆け抜けた愛機……青桜と命名したゼロ戦で敵戦艦に特攻したことも……。
それなのに、俺は……何事もなく背の高い雑草が生い茂る草原なんかに寝転んでいるんだ!
さらにおかしい……俺は死んだ筈なのに、どういうワケか肉体がある……どういうことだ⁉
でも、こんな清々しい気分になったのは久しぶりだ。
故に脳裏を過るだろうなぁ……家族、そして結婚を誓った恋人かもしれないモノ達の姿が――。
「おい、ラジコン飛行機があるぞ!」
「ゼロ戦のラジコン飛行機じゃないかしら? 誰かが聖地アンザスから持ってきたじゃないの?」
「多分、お前の同級生の田村じゃないのか?」
「ありえるー! 魔術を使ってラジコンをコントローラーなしで操作しようとしていたしね。」
ん、女の声だ……どうやら近くに誰かいるようだ。
「あ、兎獣人が倒れている!」
「なんかレトロな飛行機乗りって感じの格好をしているぞ、コイツ。」
兎獣人? それにレトロな飛行機乗りの格好……何を言っているんだ?
さて、瞼を開けると、そこにいたのは――。
「わ、外国人! ううう、まさか、ここは……敵国!」
くう、俺は敵国へ来てしまったのか⁉
そんな俺の双眸には、容姿が母娘、それとも姉妹という具合に似たふたりの美しい若い女の姿が映り込む。
ひとりは背の高い巨乳の女、もうひとりは小柄で眼鏡をかけた……う、そんなことより、ふたりの女は金髪で青い眼をしている!
俺は敵国に不時着してしまったのかーッ‼
「外国人? おい、コイツ……ジャップの飛行機乗りだな!」
「ちょ、ジャップって差別用語なんだってば!」
「え、差別用語なの? 知り合いの軍人達は日本人のことをみんなそう呼んでいたから癖で……。」
「まったく、七十年以上差があるこれだから困る。あ、ゴメンね、兎さん、このクソババアが気に触るようなことを言っちゃって……。」
「…………。」
コイツら、一体、何を……七十年以上の差⁉
小柄で眼鏡をかけた方の女が、そんなことを口走ったぞ……まったく、何がなんだかわからなくなってくる!




