EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その61
「うおおお、ここから出せぇ!」
「重い! 早く退けろ!」
「無理だ。俺は動けん……。」
「解せん! 何故、地盤が崩壊し、穴が開くんだ!」
「おい、暴れるな! うあああ、誰だ、俺の背中を押すのは!」
「うえええ、なんで僕達まで……。」
「ハハハ、文句を言う前に脱出することを今は考えよう。」
と、木霊達、それにフィンソスとフィンクスが、穴の中で騒いでいる。
むう、アイツらも木霊達と一緒に落っこちたのかよ、まったく!
さて、おはぎの山の頂上には、ポッカリと大きな穴が――。
まあ、そんな穴が地盤沈下によって生じたので、俺達は助かったのかも……。
しかし、ここはトンでもなく地盤が弱い……あ、ああ、おはぎの山というワケで粒餡の塊だったな。
ついでにだけど、そんなおはぎの山の頂上に生えている筋骨隆々のボディービルダーという木霊達の本体である蜂蜜の木も何気に傾いた気がする。
「ふ、ふう、なんとか脱出できたぜ!」
「おお、それは良かったな、ソロン。」
「むう、もう少し俺のことを心配しろよ! 俺はお前の……げぶっ!」
「それ以上、言ったら、今度は股間を蹴りあげるぞ、ゴルァァ!」
そういや、おはぎの山の頂上には、粒餡の地面に埋まった状態のソロンもいたな。
つーか、この男は勝手に俺のことを恋人とか妻だと思い込んでいるから鬱陶しいさが尋常じゃないんだよなぁ……。
「むう、あの木霊達を一網打尽にしてしまうとは……やるじゃない!」
「一網打尽っつうか、このおはぎの山の特徴を把握すれば、なんとか……。」
「そ、そうかぁ……お、おい! どうでもいいが、私をどこへ連れて行くんだ!」
「決まっているじゃろう、セクメト。スキュラのところだ。コイツを持ってね。」
ピルケは子ライオンのアタランテを開放する気がなさそうだ。
本気で愛玩動物にする気なのかも……。
と、それはともかく、蜂蜜の木の枝を入手できたワケだし、まずはコイツをあのオレンジジュースの湖のど真ん中にある小島に住むスキュラに私に行かなくては――。
「うおおおおお、貴様らァァァ~~~!!」
「わあ、木霊がひとりだけど追いかけてきたぞ!」
「ほ、ほんげー!」
「お姉様、逃げましょう!」
「あ、ああ、当たり前だー!」
うく、木霊はまだいたのかよ!
でも、ひとりだが……と、とにかく、今はビスケットの階段を駆け降りなくちゃな!




