EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その60
「き、貴様ら! わしらの本体から枝を切り落としたな!」
「いや、圧し折ったんだ!」
「どっちもでもいい! とにかく、本体を傷つけやがって……許さん!」
「うおおお、万死に値するゥゥゥ~~~!」
木霊達の頭は髪の毛が絶命したかのようなスキンヘッドなんだが、そんなスキンヘッドな頭から、ボッと激しい光が吹き出し、その奔流が天に向かって立ちのぼる!
その様は、まるで激しい怒りが生み出した光が、怒髪天を衝くとばかりに逆立った髪の毛のようだ。
オマケに、そんな怒り狂う木霊達のマッスルでたくましい身体が、さらにモリモリと膨張する。
「うわああ、こりゃ不味い状況だぞ! どうするんだよ!」
「お姉様、きっと、あいつらは私達を捕まえることができませんよ、大丈夫ですってば!」
「お、おい、何かしらの作戦があったりするワケ?」
「ま、そんな感じですかね。んじゃ、お姉様、私達と一緒にこちらへ!」
うおわ、怒り狂う木霊達が追いかけてきた!
え、大丈夫……ど、どういうこと⁉
と、とりあえず、フィンネアの言うことを信じてみるか……。
「か、階段? 駆け降りるのか?」
「はい、その通りです。でも、私達が降りるのは、そうですね……六段か、七段くらいです。」
「お、おう、わかった!」
俺はフィンネアに引っ張られるかたちで、おはぎの山の頂上と麓を繋ぐ階段のところへやって来る。
何かしらの作戦があるのかは知らんけど、ビスケットの階段を六段か、七段、降りるだけでいいのか……わあ、木霊達もビスケットの階段のところへやって来たぞ!
「卑怯者めっ! わしらと正々堂々と……ぐ、ぐわあああっ!」
「な、なにィィ! あ、足が……わしの足が沈む!」
「ぬおおお、下半身まで埋まってしまった! 動けんんんっ!」
「あおおおーっ! 穴が……地盤が崩落し、穴が、穴がァァァ~~~!」
わお、木霊達のマッスルで雄々しい巨体が、次々と地面に埋まり始める……な、何が起きたワケ⁉
「お、おい、こりゃ、一体……。」
「お姉様、忘れていませんか? ここが柔らかいおはぎの山だってことを――。」
「お、おお、そういえば、そうだったな! でも、何故、俺達は埋まらず木霊達だけが……。」
「キョウ様、キーワードは体重ですよ。」
「た、体重⁉」
「はい、少し調べてみましたが、このおはぎの山はモノがモノなだけに下手をすると崩れてしまいかねないほど脆いのです。特に階段の辺りなんかは……。」
「ま、そんなワケで体重が軽い私達ならともかく、木霊達のような筋肉の塊が集団で、ここへやって来たら、どうなると思います?」
「む、むう、タダでさえ柔い粒餡の地盤が、さらに緩くなって――。」
「ま、そういうワケよ、お姉様。アイツらは、自分自身の体重が仇となってしまったんです!」
メリッサ曰く、おはぎの山の頂上と麓を繋ぐ階段がある周辺は、特に粒餡でできた地盤は弱いらしい……む、むう、体重に関してはあえて言わないけど、軽い俺達と打って変わり、筋肉の重戦車のような木霊は、ドドドドッ――と、地鳴りのような足音を奏で、オマケに集団でやって来たので、当然とばかりに粒餡の地盤は崩壊したってところだろう。




