EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その50
「ここからが本番だニャン!」
「さあ、来いガオ!」
「私をナメたことを後悔させてやる!」
「三対一の戦いか……燃える展開ね!」
「なあ、分身と本体の区別がつきそうだけど、それがあっちゃんは理解しているのかな……。」
「気づいてなそうだガウ……。」
さてと、月神流忍術とやらの使い手でもある子ライオンのアタランテは、分身の術を行使し、三体に分裂する――が、どうやら〝失敗〟したっぽい気がする。
え、どんな失敗かって⁉
そうだなぁ、ありていに言えば、〝本物〟が三頭の中のどいつか誰が見ても、すぐに判別できるところかな?
何せ、分身というのは頭がピンク色のモコモコした綿飴のようなアフロヘアーのモノと、身体に一切に毛が生えていい無毛のモノだし……。
「アルェ~……なんか変な感じね。」
「あっちゃん、気づけよ!」
「え、何を? わ、危ないっ!」
むう、アフロディーテは気づいていないのか⁉
分身と本体がメチャクチャクわかりやすいことを……。
と、それはともかく、分身し、三頭に増えたアタランテの攻撃が始まる!
「食らえ、三位一体の技……獅子三連爪を!」
「く、美神拳の防御奥義、天翔る白鳥の御翼で……モ、モギャアアアッ!」
むう、アフロディーテが防御奥義だという天翔る白鳥の御翼を展開するが、アタランテの二体の分身とともに繰り出す獅子三連爪という必殺技の方が、ほんの少しだけ展開するのが早かったようだ!
ああ、三位一体の技、獅子三連爪がアフロディーテの身体を直撃し、ズタズタにその真っ白な身体を引き裂く!
「勝った!」
「まだよ、この程度の傷……すぐに治るわ。この香水を使えば!」
アタランテは見た目は子ライオンとはいえ、獲物の身体をズタズタに引き裂く鉤爪を持っている。
下手すりゃ人間だって大怪我を負わされてしまうそんな爪の一撃を同時に、三度、食らったアヒルのアフロディーテの身体は、当然、血まみれのズタボロである……ふえええ、アタランテの分身の一頭に右の翼がもがれちゃってるぅ!
だけど、隠し持っていたガラス瓶の中に満たされていた透明の青いの液体――香水を噴射させると、ズギュウウンともげたアフロディーテの右の翼が瞬時に再生する……わお、オマケに胴体に負った傷も治ったぞ!
「あああ、汚ないぞ! そんなモノを隠し持っているなんて!」
「アハハハ、戦いはこれからよ! 美神拳、光爆羽!」
「く、触れたら爆発する羽か! さっきより危ないじゃないかーっ!」
むう、アフロディーテは今度は触れると爆発する光の羽をアタランテ目掛けて発射する。
な、何気に凶悪な技を持っているようだな、このアヒルちゃんは――。
「あっちゃんの方が悪い奴に見えないか?」
「うん、それは言えるガウ……。」
「小規模だけど、あの爆発する羽を飛ばすには、マジでやめてほしいなぁ、こっちまで被害が出そうだし……。」
「むう、あのアタランテってライオンを応援したくなるガウ!」
うーん、それは言える。
アフロディーテは触れると爆発する光る羽を飛ばしまくっているし、このままだと仲間のアレスやサキにまで被害が及ぶかもしれない。
「わあ、ビスケットの階段やその周りのおはぎの地面が吹っ飛んで危ないガウ! これはホントに巻き込まれそうだガウ! チビライオン君、頑張れガウ!」
「あっちゃんには悪いけど、チビライオンを応援する!」
「ちょ、アンタ達、どっちの味方をしてんのよ……へごあっ!」
「隙あり! まったく、これでダウンしてもらいたいわ!」
シャッと一瞬の隙を突くかたちでアフロディーテの懐に入り込んだアタランテの猫パンチ……いや、獅子パンチがアフロディーテの顔面に直撃する!




