EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その46
「アンタ達には蜘蛛の良さが永遠にわからないと思う!」
「うーん、別にどうでもいいような気がするんだが……。」
蜘蛛は益虫だけど、どうしても好きになることができない。
なんだかんだと、あの姿はグロテスクに他ならないし……。
そんなワケで小さいモノ、大きなモノに問わず、名状しがたき宇宙的恐怖を感じるんだよなぁ。
「それはどうでもいいけど、お前は何者なんだよ!」
「私はアルケニーよ。タダの蜘蛛じゃないわよ。」
「まあ、見りゃわかるけどさ……。」
「ところでさぁ、アンタ達って、このジャングルの奥に行くつもりなんでしょう?」
「まあ、そうだけど……。」
「お、目的が同じね。じゃあ、一緒に行かない?」
「も、目的が一緒だと⁉」
俺がもっとも忌み嫌う生き物である蜘蛛の下半身を持つ魔女は、アルケニーと名乗る……え、目的が同じ⁉
「この先にスキュラがいるはずよ。」
「じゃあ、さっきの緑色の巨大な蛸はスキュラじゃなかったのね。」
「アレはスキュラの使い魔だと思う。さて、アンタ達もあの蛸からオレンジゼリーをもらったと思うけど、アレはこの島へ足を踏み入れるための通過儀礼みたいなもんだと思うわ。それに、あのオレンジゼリーを食べないと、ここへ上陸することはできなかった筈よ。」
「は、はあ……。」
へ、へえ、あのオレンジゼリーにそんな意味が……と、アルケニー曰く、この先に、どうやらスキュラがいるようだ。
「ところで、蜘蛛さんは何故、このお菓子だかけの固有結界に閉じ込められているのさ?」
「ん、私はキルケーの奴とケンカしたのよ。そんなワケで、ここから出た方法を知るキルケーの相棒のスキュラを探していたのよっつーか、私は反天空姫同盟の仲間なのに酷い奴だとは思わないか?」
「は、反天空姫同盟!?」
「ああ、まあ、突然、反天空姫同盟と言っても意味不明の言葉だよね。と、そんな反天空姫同盟とは、所謂、オリン山の天空に対抗する組織ってところかな? ちなみにメンバーは、私のような下半身が人在らざるモノが多いわよ。」
「ん、じゃあ、あのラミアも仲間っぽいなぁ?」
「ラミア? うん、仲間だよ。」
へ、へえ、オリン山ってところには、主である天空姫ゼウリスに対抗している連中が潜んでいるワケね。
しかし、何が目的対抗しているんだか……。
「私たちが、こんな姿で生まれたのは、始祖が天空姫や女帝に歯向かったからって聞く。」
「うーん、逆恨みにも聞こえるんだが……。」
「逆恨みなんかじゃないわ。これは紛れもなく事実! だから、私達は天空姫ゼウリスの取って変わって、この山の支配者に……新たなる信仰の対象になることが目的よ!」
「そ、そうなんだ……な、何気に凄い目的だね。女神の挑戦しようとしているワケだし……。」
天空姫ゼウリスに変わるオリン山の新たなる象徴……信仰の対象になることが目的なのね。
しかし、アルケニー達、上半身は人間でも下半身は蜘蛛とか蛇であるモノ達――反天空姫同盟の連中は、勇気があるなぁ……。
なんだかんだと、高次元の存在である〝神〟――天空姫ゼウリスに挑戦しようとしている目論んでいるようだし。
「さて、さっさとスキュラを探して、ここから出る方法を教えてもらったら、コイツで睡眠薬をつくろうと思っているわ。最近、寝不足で困っているのよ。」
「ん、青い草?」
「あ、ああ、これね。プロメテウスの草という滋養強壮の薬の材料になる一方で強力な睡眠薬の材料になるモノでねぇ。」
「な、なんだってー! そ、それがプロメテウスの草だって! も、もし良かったら、少しわけてくれー!」
わお、意外なかたちでプロメテウスの草が手に入りそうだぞ!
まさかアルケニーが、アレを持っていたなんて――。




