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EP12 俺 ライバル宣言されて困ります。その43

 ここは何もかもが甘いお菓子だ。


 草木は飴やビスケット、水溜まりはジュース、そして見下ろした地面にある大小に問わず石は、チョコレートの塊や金平糖――。


 虚空をフワフワと漂う雲は、きっと綿飴なんだろうなぁ……。


 と、俺達が何者かの罠にハマるかたちで取り込まれてしまった固有結界内の情景を少しだけ説明してみた……おっと、誰かやって来たぞ!


 俺と一緒にいない仲間か、それともお菓子そのモノである固有結界を展開しているモノか⁉


「わ、黒い大きなお馬さんです、お姉様!」


「クンクン、あれはあの馬は飴細工だ……つまり、あの黒い大きな馬は魔法生物だ!」


「アレス、いたのかよ! さて、命を持った馬を模した飴細工に跨っている奴がいるな。」


「銀髪のチビッコですね。もしかして、あのコが……。」


 フィンネアの使い魔であると同時に、愛犬でもあるアレスは、どんな犬種にも変身できる存在である。


 とまあ、そんな変身能力のせいで一緒にいることに気づかなかったぜ。


 何せ、小型犬の一種であるダックスフントの姿に変身し、フィンネアの着ている黒いワンピースのスカートの中に潜り込んでいたワケで――。


 それはさておき、命を持った大きな黒い馬を模した飴細工――魔法生物に跨った銀髪の小柄な女のコがやって来たぞ。

 

「フフフフ、ようこそ! 甘いお菓子が無限に内包された世界へ!」


「な、なんだ、お前はガウ! ギャ、ギャフーンッ!」


「あ、ああ、サキ! く、今度はショートケーキが飛んできたぞ! はっ……さっきの生クリームの塊を飛ばしてきたのは、お前だったのか!」


「そうよ、あれはご挨拶ってヤツよ。さて、私の名前はキルケー……人呼んでスイーツマイスターよ!」


 むう、黒い大きな馬の姿を模した飴細工の魔法生物に跨る銀髪の女のコの白くて細い右手をスゥと頭上にかかげると、ポウンとそんな右手の手の平に真っ赤な苺が食欲をそそるショートケーキが出現する!


 その刹那、轟ッ――と、物凄いスピードでサキの顔面に目掛けてショートケーキが飛んでくる!


 ドパァァァン! と、ショートケーキが弾け飛ぶと同時に、サキも激しく吹っ飛ばされる……ショ、ショートケーキ侮り難し!


 さて、さっき俺に対し、生クリームの塊の集中砲火を浴びせてきたのは、どうやらコイツ――キルケーの奴の仕業のようだ!


「ウギャー! このショートケーキ辛いガウ!」


「フフフ、私は甘味を辛味に変えることができるのだァァァ~~~!」


「どうでもいいけど、俺達に何か恨みでもあるのかよ! いきなり、こんな場所に閉じ込めやがってーっ!」


「恨みなんかないよ。なんだか面白そうな集団が、私の寝床にやって来たんで、暇だったんでちょっと悪戯をするつもりで~☆」


「む、むう、単なる嫌がらせかよ! てか、ここから出せよ!」


「嫌よ!」


「ふええ、即答かよ!」


 く、なんて奴だ!


 俺達を暇潰しで、こんなお菓子だらけ世界に閉じ込めやがって!


「フフフ、どうしても、ここから出ないというのなら、スキュラを探すんだね。」


「ス、スキュラを探せって⁉」


「そう、アイツは抜け道を知っているからねぇ……あ、凄く衝撃的(インパクト)な姿をしているから、すぐにわかると思う。んじゃ、私は用事があるから立ち去らせてもらうね~。」


「あ、ちょ、お前!」


 スキュラを探せ⁉ それに衝撃的な姿だって……。


 ちょ、その前にどこへ行くんだ、キルケー!


 まったく、メチャクチャなチビッコだな。


「お姉様、とりあえず、スキュラを探しましょう。衝撃的な姿だっていうし、見つけやすいかも――。」


「あ、ああ、それしか方法がないなら仕方がないか……。」


 キルケーはスキュラを探せって言っていた。


 うーん、このお菓子尽くしの世界を――固有結界を展開しているのは、お前じゃないのかよ!


 むう、仕方がない、スキュラを探してみるか、衝撃的だって言うし……。


 

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